《本記事のポイント》

  • 米司法省が、中国産業スパイへの対策チームを設置
  • 9月以降で中国の産業スパイ行為を4件摘発
  • 日本は中国と経済協力を拡大する方針だが、考え直すべき

アメリカが、中国の「技術窃盗」に次々と手を打っている。

ジェフ・セッションズ米司法長官は1日、中国による米企業の機密情報窃取に対応するため、省内に新しく対策チームを設置したと発表した。司法次官をトップに置き、連邦捜査局(FBI)高官や司法省職員らで構成する。

これにより、ここ数カ月で立て続けに行われている中国産業スパイの摘発がさらに進むと予測される。

対策チームの設置に加え、セッションズ長官は同日、米半導体大手マイクロン・テクノロジーから企業秘密を窃取した疑いで、中国国有企業と台湾企業などを連邦大陪審が起訴したと発表した。

起訴されたのは、中国国有の半導体メーカー「福建省晋華集成電路(JHICC)」とJHICCの台湾提携先である台湾半導体メーカー「聯華電子(UMC)」、およびマイクロン・テクノロジーの台湾子会社に所属していた台湾籍の3人。マイクロン製の半導体メモリー「DRAM」の製造や設計などについての機密情報900件以上を窃取したという。

起訴の発表に先立ち、米商務省は10月29日、JHICCへの米国製品の輸出や米国発の技術の移管を禁止するなど、技術流出の穴を一つひとつふさいでいる。

スパイ行為を行う中国と経済関係を強化する日本

今回の起訴発表を含め、9月以降に摘発された中国の産業スパイ行為は4件にのぼる。

9月には、中国政府の指令を受けてアメリカでスパイ活動をしようとした中国籍の男をシカゴで逮捕。10月には、2件の産業スパイ行為で計10人以上の中国国家安全省当局者を起訴した。

中国国家安全省の工作員がアメリカに身柄を引き渡されるのは初めてのことで、FBI幹部は「(身柄引き渡しによって)中国政府がアメリカに対する産業スパイ行為を直接監督していることが浮き彫りになる」と、米中冷戦の構図を明示した。

アメリカが産業スパイの根絶やしに動く一方で、安倍晋三首相は10月に訪中。事実上、中国政府が提唱する「一帯一路構想」に協力姿勢を示すなど、経済協力を強めている。

安倍首相は中国と手を結ぶことによって、短期的な経済成長を手に入れたい考えだろう。しかし、それが何を犠牲にした"成果"なのか、立ち止まって考えるべきだろう。

(片岡眞有子)

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