《本記事のポイント》

  • 残り1カ月を切った台湾の地方選で、与党の支持が伸び悩む
  • 台北市長選などの有力選挙に負ければ、蔡英文総統の責任論に発展しかねない
  • 蔡氏と台湾独立派を勢いづかせる起爆剤は、トランプ米大統領の訪台

台湾の次期総統選挙の前哨戦であり、11月24日に投開票される統一地方選挙まで1カ月を切った。蔡英文総統率いる与党の支持率は2割台に低迷し、現有の議席を守り抜けるかが焦点となっている。

与党の支持率は、政権交代しても経済状況がよくならない、という不満などで低下。また蔡氏は、中国との統一でもなく、独立でもない「現状維持」の方針を掲げているものの、その姿勢が"弱腰"として捉えられ、批判を受けている。

地方選の中でも注目されているのが、首都の台北市長選。現職で無所属の河文哲(コー・ウェンチョー)氏が、二大政党の不満の受け皿として支持を伸ばし、与党候補者が追う展開となっている。

蔡陣営が、台北市長などの有力選挙で敗北すれば、責任論に発展する可能性があり、2020年の総統選の再選にも影響が及ぶ。もし蔡氏が再選できなければ、日米などが連携して形成しつつある「対中包囲網」の一角が崩れかねない。

トランプ大統領の訪台が、台湾を後押しする

求心力を失いつつある与党が支持率を回復させる起爆剤となるのは、「トランプ米大統領の台湾訪問」だろう。

トランプ政権では、歴代政権に比べて米政府高官が訪台する頻度が多く、長らく凍結していた台湾への武器の売却も決定。米議会も、環太平洋合同演習(リムパック)への台湾の参加や、米台による合同軍事演習の実施を求める法案を提出するなど、政権も議会も台湾重視が鮮明となっている。

そうした中で、政府高官の相互訪問を可能にした「台湾旅行法」に基づき、トランプ氏が台湾を訪問すれば、蔡氏の支持率は一気に回復し、「台湾独立論」を勢いづかせることになる。同時に、中国に接近する台湾の「親中派」の勢いが削がれ、対中包囲網のつながりが強化されるのは違いない。

もちろん、中国を大いに刺激することにはなるが、中国がアジアの支配圏を強め続けるのであれば、トランプ氏の訪台は、極めて効果的なけん制球になる。トランプ氏は、対中包囲網の形成を後押しするためにも、台湾への訪問を検討すべきではないか。

(山本慧)

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