《本記事のポイント》

  • 韓国製造業の中心である造船業がリストラの嵐
  • 韓国造船業は不当な補助金で成長し、日本の造船業が被害を受ける
  • 日本は他国の不当な通商政策に目を光らせ、国内の消費を喚起すべき

韓国製造業の中心的存在である造船業が極度の不況に陥り、リストラの嵐が起きている。

「韓国の名古屋」と呼ばれる蔚山(ウルサン)の7月の就業者数は、前年同月比で1万9000人減少した。1万人を超える失業者数は、かつての通貨危機でも見られなかったことから、社会問題化しており、文在寅大統領の支持率は急落している。

リストラの要因は、政府が進める「最低賃金の引き上げ」と「労働時間の短縮」だ。この煽りを受け、造船や自動車などの下請け企業の人員削減が相次ぎ、最低賃金の引き上げに反対する集会が起きている。

文大統領は5月、造船業の不況で停滞する全国5つの地区を、同地に立地する企業と勤労者の法人税・所得税を100%減免する「産業危機対応特別地域」に指定した。緊急の経済支援を行っているものの、焼け石に水の状況にある。

日本でも、最低賃金の引き上げと労働時間の短縮などの「働き方改革」が実施されているが、韓国では同様の政策を行い、不況に突入している。

韓国造船業は不当な補助金で成長

韓国の造船業はまさに火の車の状態にあるが、同国の造船業は、政府から不当な補助金が支給されているため、日本との「貿易摩擦」を抱えている。

2015年以降、「造船ビッグ3」の一角を占める大宇造船海洋が経営危機となった。そのため、政府系金融機関が総額1兆2000億円の金融支援を行い、大宇造船が採算度外視の価格で船舶を売り出した。

その結果、国際的な船舶価格が下落し、日本の造船業は壊滅的な被害を受けた。日本の造船業は企業再編を迫られ、今年7月の輸出船契約は4割減少。かつて5割近い建造量シェアを誇った日本の造船業は、20%前後にまで落ち込んでいる。

韓国の造船業は、政府の支援で国際競争力を高め、現在は、国内の政策によって苦境に立たされているわけだ。

日本の造船業は「トランプ貿易戦争」の縮図

日本の造船業は、韓国のアンフェアな政策で体力を削られているが、これはトランプ米大統領の「貿易戦争」と同じ構図と捉えることもできる。

トランプ大統領が中国を目の敵にしている理由は、同国が市場を開放せず、不当な企業支援や、技術の詐取などを行っているためだ。そのため、米国内の製造業は、海外へ流出し、ものづくりの精神を失ってしまった。

そこでトランプ政権は、輸入品に関税をかけ、ショック療法的な手段で、製造業の衰退にテコ入れしている。これにより、製造拠点を自国に回帰させる企業が増え、雇用や賃金の指数も上昇している。

しかも、国内需要を喚起するために減税と規制緩和を実施。今年4~6月期の実質GDPは、年率4.2%の高成長を叩き出している。

トランプ大統領は、関税をかけて自国産業を守りつつ、減税で企業の「稼ぐ力」を強化。一方の日本は、韓国の不当な政策に十分な対応をせずに、増税や働き方改革などで企業の体力を奪っている。

どちらのやり方が経済を発展させるかは、好調なアメリカ経済のさまざまな指数を見れば明らかだろう。

日本は、他国の行き過ぎた通商政策に厳しい目を向けながらも、トランプ氏のように、国内の消費を活性化させる必要があるのではないか。

(山本慧)

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