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《本記事のポイント》

  • 韓国当局が10日、原産地の偽造で、北朝鮮産の石炭などが密輸されていたと発表
  • 韓国が北朝鮮制裁に足並みを揃えないばかりか、自国の抑止力を低下させている
  • 日米は、「国防体制の弱体化」を推進して北朝鮮になびく韓国を説得すべき

昨年、持ち上がった北朝鮮から韓国への密輸事件をめぐり、韓国の関税庁は10日、北朝鮮産の石炭・銑鉄が原産地証明書の偽造によって、韓国に密輸されたことを確認したと発表した。これを受け関税庁は、関係者を送検するとした。

韓国が北朝鮮制裁に関する国連安全保障理事会の決議に反していたことが分かり、国際社会から厳しい目で見られることは免れない。

米下院テロリズム・不拡散・貿易小委員会のテッド・ポー委員長は8日(現地時間)、米ボイス・オブ・アメリカのインタビューに対し、密輸に関与した企業が韓国企業であっても、セカンダリー制裁(第3者制裁)を加えるべきと主張している。

韓国は「国防弱体化」政策を推進

さらに注目すべきは、韓国が制裁に足並みを揃えていないばかりか、自国の抑止力を低下させる方向に突き進んでいることだ。

韓国の国防部(省に相当)が7月に発表した「国防改革2.0」では、北朝鮮への戦力低下が如実に示された。韓国メディアの報道をまとめると、その内容は次の通りだ。

  • 北朝鮮と戦争になった場合、韓国軍が平壌を2週間以内に占領する「攻勢的新作戦遂行概念」を破棄する。

  • 常備兵力は、現在の61万8000人から、2022年には50万人に削減(削減はすべて陸軍)。

  • 同じく将官の人数も、436人から360人に削減(陸軍は66人、海軍と空軍は5人減る)。

  • 国民の兵役期間は、陸軍と海兵隊は21カ月から18カ月、海軍は23カ月から20カ月、空軍は24カ月から22カ月、それぞれ短縮する。

  • 陸軍の師団数は、39から33に減り、北朝鮮軍と対峙する最前線の師団は、11から9になる。これにより、師団が担当する前線は、約2倍広くなる。

韓国の文在寅大統領は、大統領選の公約として、兵役期間の短縮を訴えていた。同氏は、朝鮮戦争の休戦協定が締結された7月27日、「休戦協定65周年に当たる歴史的に深い意味がある今日、国防改革報告の対話を持つことは意義深い」と述べている。

しかし、北朝鮮は今のところ、核の軍縮プロセスを履行せず、通常兵力すら削減していない。つまり、脅威のレベルは高止まりしたままだ。にもかかわらず、韓国が国防体制を弱体化させる政策を推進しているのは、隣国の日本としても対岸の火事ではない。

文大統領は、朝鮮戦争の「終戦宣言」の締結という政治的論理を優先させ、安全保障を軽視している。日米は、韓国がこれ以上、北朝鮮になびかないように、説得する必要があるだろう。

(山本慧)

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