《本記事のポイント》
- 翁長知事の米軍・日本政府批判は、沖縄を危険にさらす。
- 中国は、台湾を戦わずして侵略しようとしている。
- トランプ政権を批判する国際社会は、「敵」を見誤っている。
沖縄を舞台に、「中国の野望」が顕在化している。
沖縄は23日、先の大戦における沖縄戦の犠牲者を追悼する「慰霊の日」を迎えた。沖縄では休日となるこの日、沖縄県糸満市の平和祈念公園では、沖縄全戦没者追悼式が開かれた。
式典の平和宣言の中で、翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、「『辺野古に新基地を造らせない』という私の決意は県民とともにあり、これからもみじんも揺らぐことはありません」と日本政府を批判した。
一方、前日の22日、台湾の李登輝元総統が沖縄入り。24日に糸満市で行われる、大戦で犠牲になった台湾出身者の戦没者慰霊祭に出席する予定だ。
これに先立つ5月30日、中国政府の台湾窓口である「台湾事務弁公室」の報道官は、李登輝氏の来沖について、「植民地統治の美化。侵略戦争と軍国主義を支持するような行為には断固として反対する」と批判していた。
翁長知事の「平和宣言」は、沖縄の平和を危険にさらす
翁長氏の"平和宣言"と、李登輝氏の来沖に対する中国政府の批判。
一見、バラバラに見える事象だが、背景には、「先の大戦時、日本は悪い国だった。沖縄の人々を苦しめた。そうした反省の下で、沖縄の米軍は撤退すべきだ」という日本悪玉論が透けて見える。
しかし、翁長氏の米軍・日本政府への批判は、沖縄を危険にさらす。
歴史的に、アジアにいた米軍が去った地域には、その後、必ずと言っていいほど中国軍が侵出してきた。70年代のベトナム(パラセル[西沙]諸島)や、90年代のフィリピン(スプラトリー[南沙]諸島)を振り返っても分かるように、現在、両諸島を含む南シナ海には、中国が軍事施設を完成させている。
中国の狙いは「戦わずして、台湾を侵略」
また、中国の脅威が、台湾を追い詰めている。
5月下旬、西アフリカのブルキナファソが、台湾との国交断絶を発表した。同国は昨年、中国の金銭的な支援を断り、「台湾を裏切ることはしない」としていたにもかかわらず、100年以上続いた関係に終止符を打った。
5月1日には、中米のドミニカ共和国が、中国との国交を樹立し、台湾との国交を断絶したばかり。ブルキナファソの断交によって、台湾と国交がある国は18カ国と最小になっている。
この背景には、「台湾は中国の一部」と主張する中国が、台湾と国交を結ぶ国に経済支援などをちらつかせつつ、「中国と台湾のどちらを取るのか」と踏み絵を踏ませていることが指摘されている。
中国の目的は、国際社会から台湾を孤立させ、経済的にも干し上げ、台湾が自ら白旗を上げる、つまり「戦わずして、台湾を侵略する」ことである。
国際社会が警戒すべきは「習近平・ファースト」
地図を見ても分かるが、台湾と沖縄は非常に近い。台湾が中国に取られてしまえば、沖縄が取られるのは時間の問題になる。その意味で、台湾と日本は「運命共同体」と言える。
もちろん、この共同体には、世界一の軍事力を誇るアメリカの関与が欠かせない。
トランプ米政権はここ数カ月の間に、アメリカと台湾の高官が相互訪問できる「台湾旅行法」を成立させたり、大使館に相当する新しい事務所を台北に開設したりと、台湾を中国から守ろうとする動きを加速させている。
トランプ政権の中国などに対する経済制裁を「自国主義」などと批判する向きもあるが、「トランプ革命」の本質は、「軍事独裁国家・中国の兵糧攻め」だ。
いま国際社会が警戒すべきは、習近平国家主席に権力を集中させている「習近平・ファースト」の野望を抱く中国である。
(山下格史)
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