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《本記事のポイント》

  • 少子高齢化などを背景とした「人手不足」が、自衛隊の現場を直撃
  • 自衛隊の採用計画が4年連続で計画を下回る
  • 現場隊員の充足率は69.5%にすぎず、部隊の「全滅」を意味する

どこもかしこも、産業界は人手不足で悩んでいる。だが、今の日本を取り巻く状況を考えた時に、最も憂慮すべき人手不足は、自衛隊であろう。

米朝首脳会談に関するニュースが飛び交う中、自衛隊の主力隊員である自衛官候補生の採用計画がこのほど発表された。2017年度の採用計画が約8600人だったのに対し、入隊を希望したのは約6800人(3月31日時点)にとどまり、4年連続で計画を下回ったのだ。

現場隊員の充足率は7割にすぎない

17年3月末時点では、自衛隊の定員は約25万人で、実数は約22万人、充足率は90.8%となっている。一見すると、隊員の人手不足が問題であるとは思えないだろう。

しかし、階級別で見ると、「幹部」の充足率は93.2%である一方で、最前線で戦う「士」の充足率は、69.5%にすぎない。15年3月末の充足率が、74.6%であったことから、たった2年で戦力は約5%もダウンした。

こうした状況を分かりやすく例えれば、一般的に、兵士の3割が損害を受ければ、戦力として機能せず、「全滅」した状態であると言われる。つまり、自衛隊は戦う前から、全滅状態にあり、国防体制そのものが危機に直面していることを意味している。

有事になれば、人手不足で反撃できない!?

採用計画について、防衛省幹部は「任務はきついかもしれないが、国防を担う人員確保は喫緊の課題だ」と述べている。このコメントは、苦しい台所事情を物語っている。

今後、日本が有事になれば、全国で隊員を募集する広告が打たれる光景を目にするかもしれない。だが、急造された自衛隊が、万全の状態で事態に対処できるはずもない。平時においても、いつでも有事に備えられる準備を整えておく必要があるためだ。

もし日本の国防体制が、人手不足によって反撃できない事態に陥ったとしたら、それは後世の人々から嘲笑の的になるだろう。憲法改正以前に、人手不足が日本の国防体制を弱体化させつつある。

防衛費の増額や、隊員の待遇改善などを議論すべきだ。

(山本慧)

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