2018年5月号記事

人口が減っても客は増える

シャッター街、赤字企業の V字回復 物語

人口減少による衰退を乗り越え、奇跡の復活を成し遂げた、地方のお店や商店街の物語に迫る。

不況・業界不振・ジリ貧にあえぐ、あらゆるビジネスパーソンのヒントにもなるはずだ。

(編集部 小川佳世子、馬場光太郎、片岡眞有子)


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宮崎

「猫も歩かぬ街」がIT街に

200メートルの奇跡

宮崎県日南市にある油津商店街を救った、男の「覚悟」に迫る。

油津応援団代表取締役

黒田泰裕

(くろだ・やすひろ)2014年より現職。

200メートルの道沿いに、IT企業が10社―。

東京・六本木の話ではない。九州南端の宮崎県日南市にある、油津商店街の風景だ。

この区画は5年前まで、いわゆるシャッター街だった。開いている店は6つのみ。地元から「猫さえ通らない」と揶揄された。

そんな商店街を復活させた立役者の一人が、黒田泰裕・油津応援団代表取締役だ。

黒田氏が10歳のころ、商店街は最盛期を迎えていた。80もの店舗が、狭い通りにひしめいていた。

「憧れの場所でした。百貨店の屋上には遊具があってね」

しかし、1960年代をピークに日南市の人口は減り、大型店の進出も相まって、商店街は急速に寂れた。「憧れの場所」は東京へと変わる。黒田氏も地元から"流出"しようとする若者の一人となった。

大学卒業後、東京の大手証券会社から内定をもらう。胸を躍らせ、入社前の研修を受けていたそんな時―黒田氏のもとに、家から電話が入った。

「お父さんが倒れた」

次ページからのポイント

自腹を切る「覚悟」

「たまり場」を創造する

誘致ではなく「起業支援」

街づくりは「人づくり」