2018年4月号記事
第66回
釈量子の志士奮迅
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
日本ワインが世界を酔わす
「日本のワインは世界に遅れを取っている」
そんな認識が、崩れつつあります。
山梨県・甲州のブドウを使ったワイン「キュヴェ三澤」が2014年、世界最大級のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」において、日本産で初の金賞を受賞し、世界のワイン愛好家を驚かせました。同じ醸造所のワインは、その翌年も金賞を受賞。翌々年には、白ワインとスパークリングワインが、金賞より上のプラチナ賞を受賞しました。
この快挙の立役者は、山梨県の醸造家を継いだ、30代の女性。海外の専門家から「薄くて水っぽい」と酷評されていた故郷のワインを世界に売り出すため、研究に明け暮れました。
こうしたこともあり、日本では「国内生産ワインで世界へ打って出よう」という動きが加速しています。政府は、国産のブドウを使い、国内の醸造所でつくったワインだけを「日本ワイン」と表示するよう定めています。
山梨県のブドウ園。甲州ブドウは、奈良時代から続くとも言われる、日本の固有種。i-flower/PIXTA(ピクスタ)
奇跡の「五ヶ瀬ワイン」
日本ワインの飛躍は、日本の農業振興、そして地方創生の可能性も見せてくれます。 私は先日、宮崎県五ヶ瀬町にあるワイン醸造所「五ヶ瀬ワイナリー」を見学しました。
ここ五ヶ瀬は、阿蘇五岳・九重連山を望む、美しい夕日の里として知られます。ワインを試飲すると、摘みたてのブドウを頬張っているような、みずみずしく華やかな味に、魅せられてしまいました。
しかしその標高の高さは、農業のネックでもありました。年間平均気温12度と冷涼な気候と、真冬の積雪もあり、高冷地野菜をつくっても、収穫期が遅くなります。市場に出しても時期的に需要が少なく、安い値段でしか取引されません。
こうした状況を打開するため、10年前に「ブドウをつくってワインにしよう」という取り組みが始まります。ブドウなら冷涼でも栽培でき、ワインであれば、収穫時期にかかわらず、高い値段で売ることができます。
成功の鍵を握ったのは、ワイナリーの宮野恵支配人。ワイン事業の立ち上げに関わった大手造酒メーカーの役員でしたが、地元の誘いもあって一線を退き、支配人となったのです。
その取り組みは、五ヶ瀬で育つブドウの品種を、手探りで探すところから始まります。白ブドウの苗を植える時には、地元農家から「本当に育つのか」という冷ややかな声もありました。
それでも五ヶ瀬の未来のために研究を重ねる宮野支配人の後ろ姿に感動し、「ブドウを育てる」という農家も増えていきました。夫婦でブドウづくりを始めたというある地元の方は、自分が育てたメルロー種からできたワインを、かわいくて仕方がないという様子で、私に勧めてくれました。
そうして生まれたワインは、少しずつ評価を高め、「日本ワインコンクール」では日本一となります。そして、女性たちが世界中のワインから選ぶ「サクラアワード2017」でも、ゴールド賞を受賞したのです。
宮野支配人の情熱は、地元の漁業にも波及します。ある養殖業者の社長は、たまたま同じ居酒屋に居合わせた宮野支配人と意気投合。話をする中で、「カンパチに、五ヶ瀬ブドウの搾りかすを食べさせる」ことを思いつきます。カンパチは、食味改善が難しいといわれていましたが、ブドウの皮を餌に混ぜることで、生臭さや脂っこさを抑えることができたのです。
値動きの大きなカンパチでしたが、高価格で安定的に売れることが期待されています。
「よそ者、若者、バカ者」
宮野支配人は、知り合いから「バカなことをして」「やめとけ」と言われることもあったと、笑いながら語ってくれました。
しかし、冒頭の30代の女性醸造家の話もありますが、地域興しに必要なのは、「よそ者、若者、バカ者」と言われます。地域の魅力を白紙の目で見出し、柔軟な頭でその魅力を商品化できるためです。
日本の農業においても、こうした「よそ者、若者、バカ者」が活躍できる土壌づくりが必要です。例えば日本は「農地法」により、農家ではなかった起業家や株式会社が、農地を取得することが非常に難しくなっています。こうした規制は緩和していく必要があります。
自由を確保することこそ、真の意味で日本の農業を守ることになるのではないでしょうか。
ワインに限らず、品質の高い日本の農業は、世界に打って出る潜在力があります。その可能性を引き出すことができれば、日本の農業、そして、地方創生の未来は、絶対に明るいと信じてやみません。