石垣市の市街地(AdrianoK / Shutterstock.com)。

《本記事のポイント》

  • 石垣市長選は、自衛隊の配備地をめぐって保守が分裂
  • 反対派は「基地があるから狙われる」と主張するが、実際は「基地がないから狙われている」
  • 中国の脅威は日増しに高まっており、現行の自衛隊配備計画を進めるのがベストな選択

保守分裂となった3月11日投開票の沖縄県石垣市長選。3選を目指す保守系の現職市長である中山義隆氏に対し、保守系の県議である砂川利勝氏と、リベラル系の前市議である宮良操氏が挑む形となった。

市長選の争点は、平得大俣(ひらえおおまた)地区への「陸上自衛隊配備計画」である。砂川氏は今月16日、配備には賛成としつつも、計画を白紙に戻し、別の場所を選定するという政策を発表。一方、宮良氏は17日、いかなる軍事基地の受け入れも認めないと発表している。中山氏は、配備には理解を示す一方、その是非については態度を保留している。

政府が進める計画では、石垣島と宮古島に「地対空・地対艦ミサイル」を置くことで、敵艦艇の接近を阻止し、南西諸島の防衛を強化することが狙いだ。近年、中国の艦艇が同島周辺を航行する頻度が増えたことを受け、計画は2年前倒しで進められている。

基地があるから、狙われる?

しかし、地元では「基地があることで、相手に狙われやすくなる」と反対の声が上がっているという。

石垣島に住む男性は、編集部の取材に対し、「基地推進派は、『備えあれば憂いなし』という考えですが、反対派は、『基地をつくれば、標的になる』『中国を刺激してはならない』と主張しています。この対立の溝がなかなか埋まりません。市民の中にも、『自衛隊のミサイルは北朝鮮の弾道ミサイルと同じ』という誤解もあります。政府はなぜ基地が必要なのかを明確に、そして分かりやすく説明した方がいい」と話す。

先述したように、自衛隊のミサイルは、接近してくる敵を排除するためのものであって、敵基地などを破壊するものではない。

反対派が主張する「基地があるから狙われる」という考えも、中国の立場に立てば、違った見え方がある。なぜなら、石垣島は、太平洋への進出に向けて地政学的に重要な位置にある。また、人口約5万人が住む同島は、他の島に比べてインフラ整備が行き届いている。中国がこの地を占領し、部隊を駐留させたいという誘惑にかられることは、自然なことだ。

中国の行動パターンは「基地がないから狙う」

むしろ、中国のこれまでの行動パターンを見ると、手薄な地域こそが危ない。南シナ海への海洋進出はその典型だ。そのため、「基地がないから狙われる」という論理も成り立つ。

例えば、もし中国が石垣島の自衛隊基地に手を出せば、半ば自動的に戦争に突入し、米軍も出動する可能性が生じるため、相当な覚悟がなければ、手を出せない。これを軍事的には、「トリップワイヤー」と言う。

つまり、石垣島に基地をつくれば、沖縄を含む日本全体を守ることにつながる。

今回の配備地の選定をめぐっては、地元会社の利益も絡んでおり、これが保守分裂の原因にもなったという声もあるが、より大局的な見地に立てば、現行の計画を進め、早期に抑止力を強化した方がいいだろう。中国の脅威は日に日に高まっており、残された時間はそう多くはない。

(山本慧)

【関連記事】

2018年3月号 日本が再び「サムライ」になる日 ―憲法9条改正への道 - 編集長コラム

https://the-liberty.com/article/14035/

2018年1月12日付本欄 中国軍艦が2度目の入域 尖閣諸島を渡したら起きる3つの悲劇

https://the-liberty.com/article/14004/

2018年1月11日付本欄 「いずも」空母化で、日本は何ができるようになる? 軍事専門家に聞く

https://the-liberty.com/article/14001/