《本記事のポイント》

  • トランプ訪中を目前に、経済を争点に米中対立が強まっている
  • 2050年までに「トップクラスの国家」を目指す習近平の野望を抑える意図
  • 日本政府も中国の脅威を認識し、日米の協力関係を強化すべき

ドナルド・トランプ米大統領の訪中を控える中、米中の経済対立が強まっている。

米商務省はこのほど、中国政府による市場への介入を理由に、中国を「非市場経済(a non-market economy)」だとする結論を発表し、2016年12月の方針に引き続き、中国を「市場経済国家」だと認めない姿勢を示した。200ページに渡る調査をもとに、中国を非市場経済国家だと結論付けている。

中国は2001年の世界貿易機関(WTO)加盟時に、15年間「非市場経済国」としての立場を受け入れると合意したが、15年を迎えた2016年12月をもって自動的に「市場経済国家」に認定されるべきだと主張しており、今回のアメリカの決定に強い不満を示している。

中国が認定にこだわる理由は課税にある。WTO協定では、非市場経済国家と認定した国に対して、貿易相手国は安値で流入する製品に反ダンピング税などの対抗措置をとりやすくなるからだ。

米商務省は認定の翌日、中国製アルミホイルが不当に安い値段で輸入されているとして、96.81%~162.24%の反ダンピング税を課す仮決定を下したと発表した。同省は8月にも、中国製アルミホイルに16.56%~80.97%の税を課す仮決定を下しており、今回の仮決定で課税率が大幅に高まった形だ。

これに加えて、米政府高官は10月31日、中国の「略奪型の貿易と投資慣行」を問題視し、「(米中)二国間の経済問題はますます困難になってきている。われわれは、これが中国の市場経済への移行の減速を現わしているものと信じる」と中国政府に警告を鳴らした。

11月8日に訪中を控える中、トランプ政権は中国との摩擦が高まることを恐れていないようだ。

習近平の野望で冷戦再来の危機

こうした動きの背後には、習近平中国国家主席の野望への警戒感があるだろう。

習氏は10月の党大会で、「科学的な社会主義は21世紀の中国の強大な活力を生み、中国の特色ある社会主義の偉大な御旗を世界に高く掲げた」と語り、社会主義国家としての中国の躍進を強調した。さらに、今世紀半ばまでに、総合的な国力と国際的影響力で「トップクラスの国家」になると目標を定めている。

つまり、中国は2050年までにアメリカと張り合う超大国となると宣言したのだ。

習氏の野望が実現すれば、かつての米ソ冷戦のように、再び自由主義対社会主義の戦いが始まってしまいかねない。トランプ政権の一連の動向は、そうした未来を危惧してのものだろう。

しかし、政府の思惑とは逆に、企業家たちは巨大な中国市場の魅力に抗えないようだ。

フェイスブックのCEOであるザッカーバーグ氏や、アップルのCEO・クック氏などの米著名経済人は10月30日、中国の北京に集い、習氏と会合を開いた。同日付時事通信によると、中国の国営中央テレビには、参加者が習氏の発言に聞き入る姿が映し出され、さながら「習氏詣で」だったという。儲けるためなら中国経済に取り込まれることも辞さない姿勢がうかがえる。

目先の利益を優先する企業と、百年先の国家の安泰まで責任を持つ大統領との認識の差が、トランプ政権の戦略の足を引っ張っているようだ。政治と経済が一枚岩になれるかが、今後のアメリカの対中戦略の成否を分けるといえる。

5日にトランプ氏が来日する際に、安倍首相は、対北朝鮮戦略について話し合うことはもちろん、その先にある中国の脅威に向けた認識も共有しておく必要がある。

(片岡眞有子)

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