ハーバード大学教授のニール・ファーガソン氏が、21日付の米誌ニューズウィークへの寄稿で、エジプト民主化デモへの対応で戦略のなさを露呈したオバマ政権の外交政策を批判している。
ムバラク支持か民衆支持かで迷い、どっちつかずの対応をした結果、オバマ政権はイスラエルやサウジアラビアといった同盟国を落胆させた上に、エジプトの民衆も味方につけられなかったと同氏は分析する。何より問題なのは、政権を支える国家安全保障会議(NSC)などの諮問チームが、今回のデモについて何らのシナリオもシミュレーションも持ち合わせていなかったことであるという。ファーガソン氏はまた、イスラム原理主義の拡散やイランの強大化の阻止、経済的ライバルとしての中国の台頭への対応など、様々な政策ゴールについて優先順位をつけて取り組むのが戦略的思考というものだが、オバマ氏はプランを持ち合わせていないと、オバマ外交の先行きを不安視している。
オバマ外交が漂流しているというのはうなずける。オバマ大統領は「核なき世界」や「イスラムとの融和」をぶち上げてノーベル平和賞を受賞はしたものの、中東での実際の成果が上がらないと見るや、昨年からはクリントン国務長官の勧めるまま対中外交に軸足を移した形となった。「アメリカのアジア回帰」はその表れだが、一般教書をはじめとするスピーチでオバマ氏が中国脅威論に特に言及することがないところからも、対中政策への彼自身のコミットメントの低さがうかがえる。かといって中東では、2009年のイランでの反政府デモを見逃し、パレスチナ問題で進展はなく、今回のエジプトでもアメリカの中東での地位を低下させる結果を招いた。
アメリカが世界の警察官をやめる方向にあると本誌は警告してきたが、海図なきオバマ外交はまさにその流れにあるといえる。ファーガソン氏の危惧するように明確な方向性を打ち出せないままなら、アメリカの地位の低下はますます加速してゆくことになろう。
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