《本記事のポイント》
- 安倍政権、『共産党宣言』の政策にも手を出す
- 靖国参拝ゼロは「残念」で済む話なのか
- 改憲から逃げれば、国民への背信行為
9月1日に投開票される民進党代表選。選挙の焦点となっているのは、野党共闘だ。枝野幸男元幹事長が共闘路線を取るのに対し、前原誠司元外相は「政策理念が一致しない政党と協力すること、連立を組むことは野合でしかない」として対立を露わにした。
政策や理念が一致しない政党と組む共闘については、「野合」との批判が起きており、共闘に否定的な人々は61%に達している(日本経済新聞の世論調査)。自民党はかねてより共闘路線に批判的で、「民進党には、もれなく共産党がついてくる」(安倍晋三首相)という立場だ。
安倍政権、『共産党宣言』の政策にも手を出す
民進党の左傾化が注目されているが、その原因の一端は、自民党の"左傾化"にあるのではないか。つまり、「保守政党が左傾化しているため、左派政党がさらに左旋回して差別化を図ろうとしている」という構図である。
広く知られているように、安倍政権は、左派勢力の連合(日本労働組合総連合会)との対話を"熱心"に行っている。官製春闘を通じた「賃上げ」や、いわゆる「残業代ゼロ法案」をめぐる働き方改革など、連合の意向に気を配っている。
また安倍政権は、「人づくり革命」と称して高等教育の無償化を視野に入れる。教育無償化は、『共産党宣言』に「すべての児童にたいする公共無料教育」と記されているような左翼政策の代表格。皮肉なことに、安倍首相が述べる"革命"であることに違いないが、その先の未来は日本の共産主義化だ。
こうしたやり方を、政権担当能力の高さと見るか、無節操な振る舞いと見るかは人それぞれだろうが、自民党が左派の支持基盤を取り込もうとしているのは事実である。
靖国参拝ゼロは「残念」で済む話なのか
さらに安倍政権の現職閣僚は、先の終戦の日に靖国神社に1人も参拝しなかった。
閣僚参拝ゼロは、旧民主党の菅直人政権以来の異例事態。菅政権だった当時の産経新聞は、「靖国と菅内閣 国家の責務に背を向けた」(2010年8月16日付)と題した社説で強く批判したが、こと安倍政権に対しては「直接参拝しないのはやはり残念である」と一気にトーンダウン。
もし、民進党政権が靖国参拝しなければ、保守層は激しい批判を巻き起こすが、安倍政権については「沈黙」と言っていい。国のために命を賭した英霊が祀られている神社に、国家の代表者が参拝しないのが、残念の一言で済む問題であるはずがない。
改憲から逃げれば、国民への背信行為
極めつけは、自民党が結党以来掲げる「憲法改正」である。
安倍首相は当初、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」としていたが、その後支持率が低下すると、「スケジュールありきではない」と発言を後退させた。これについて、評論家の西尾幹二氏がこう断罪している。
「憲法改正をやるやると言っては出したり引っ込めたりしてきた首相に国民はすでに手抜きと保身、臆病風、闘争心の欠如を見ている。外国人も見ている。それなのに憲法改正は結局、やれそうもないという最近の党内の新たな空気の変化と首相の及び腰は、国民に対する裏切りともいうべき一大問題になり始めている」(18日付産経新聞)。
毎日新聞も「気になるのは、これまでも支持率が下がるたびに経済最優先を強調し、支持が戻れば改憲に意欲を示す、という繰り返しだったことだ」(7日付社説)と指摘している。
安倍首相が目指す長期政権の正当性は改憲が必須だが、それを放棄するのなら、「権力の私物化」と批判されてもおかしくない。
民進党が政権獲得のために、「野党共闘路線」を維持する姿勢に厳しい目が向けられているが、安倍政権も、左派の歓心を買う「野合」と言ってもいいような政権運営を行っている面がある。北朝鮮情勢も緊迫化する中、主要政党が左傾化し、改憲から手を引く現象こそ、日本の危機ではないか。
(山本慧)
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