《本記事のポイント》

  • トランプ政権は、北朝鮮の軍事開発を支援する中国企業を捜査している
  • こうした中国企業や銀行に、独自制裁を加える可能性も
  • 中国の鉄鋼ダンピングには、高関税と輸入制限で対処し、圧力を強化する方針

トランプ米政権が、中国に対する圧力を一段と強めている。北朝鮮と違法取引している疑いのある中国企業や銀行に対し、捜査を開始した。近々、制裁に踏み切ると見られている。

米連邦司法裁判所は5月、トランプ政権に対して、捜査令状を発布していた。7月6日に公表された捜査令状によると、捜査対象には中国の貿易会社「丹東至誠金属材料有限公司」(以下、丹東至誠)などが含まれていた。

丹東市の中国企業が、北朝鮮の核ミサイル開発を支援

北朝鮮と中国の国境付近に位置する中国・丹東市には、北朝鮮との貿易に関わる中国企業が数多くある。「丹東至誠」もその一つだ。

同社は、北朝鮮の石炭を中国に最も多く輸入する業者で、輸入した石炭を中国の鉄鋼大手に提供していた。北朝鮮が違法取引で得た約790億円以上の資金の一部は、兵器開発などに使われたとされている。

また、「丹東至誠」と関連のある中国の貿易会社「丹東東源実業有限公司」は、弾道ミサイルに使用できる約8760万円分の無線航法補助装置を、昨年6月に北朝鮮に送ったことが確認されている。

トランプ政権は、こうした中国企業が口座を持つ欧米の大手銀行8行において、秘密裏に資金の流れを監視していた。違法取引の証拠がそろえば、数週間以内に中国の企業や小規模な銀行に制裁が科される可能性がある。

北朝鮮への送金を仲介しているのは、メガバンク・中国銀行

トランプ政権は6月末、北朝鮮を支援した中国の「丹東銀行」に金融制裁を行って、ドル取引を禁じ、国際金融市場から締め出していた。

ただ、北朝鮮を支援する銀行の“親玉”は、大手国有商業銀行の中国銀行だという。中国銀行は、資産規模が世界第4位のメガバンクだ。

産経新聞特別記者の田村秀男氏によると、中国銀行が北朝鮮への外貨送金を仲介していることを、米財務省は突き止めているという。だが、「米財務省は制裁する中国の金融機関を来週中にも追加発表するが、リストからは中国銀行を外し、丹東銀行同様、『小物』ばかりという。ビビっているのだ」(15日付産経新聞)と指摘している。

ただ、中国銀行を金融制裁の対象にして、世界中の金融機関とのドル取引を禁じることになれば、中国は強く反発し、国際金融市場も大混乱する。トランプ政権は難しい判断を迫られている。

貿易面でも、中国に圧力を強化

また、トランプ大統領は12日、中国などが行っている鉄鋼製品のダンピング(不当廉売)に対し、「高関税」と輸入量を制限する「輸入の割当」で対抗すると発言した。

こうした施策は「保護主義的な政策だ」と反対も根強いが、単にアメリカの国益のためだけに行っているわけではない。北朝鮮への制裁を徹底するよう、中国に圧力をかけるための「切り札」の一つなのだ。

このように経済政策も、国防に密接に関わってくる。日本も、トランプ政権の施策に足並みをそろえつつ、付加価値の高い製品を開発して製造業を復活させ、国力を高め、国防強化につなげていく必要がある。

(山本泉)

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