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《本記事のポイント》

  • トランプ政権が、働きたい人が働けるよう「見習い訓練制度」を推進
  • 技術や知識がなければ稼げない現代において、「見習い訓練制度」は効果的
  • 「見習い訓練制度」の発想は、日本の高齢者の再就職などにも有効

トランプ政権の経済政策が、第二段階に突入している。

米労働省が発表した雇用動態調査によると、2017年4月の求人件数は全米で600万人を超えた。2000年の集計開始後初めてのことだ。求人数の増加は複合的な理由によるものだろうが、トランプ米大統領が掲げた「雇用を増やす」という公約は達成されつつあると言える。

しかし、求人が増え、働きたい人が数多くいるにもかかわらず、企業の人手不足が顕著だ。というのも、人材を求めているのは、建設業や製造業、医療関係など、技術を要する職種であり、職を求めているのは、そうした特殊技術を持たない人たちであるからだ。

こうした課題を解決するために、トランプ氏は「アプレンティスシップ(見習い訓練制度)」というものを推進している。トランプ氏は6月15日、この制度を拡充する大統領令に署名した。これは、予算を倍増するとともに、規制緩和を行い、企業や業界団体、労働組合が独自に訓練プログラムを組めるようにするというものだ。

この「アプレンティスシップ」とは、実地の職業訓練制度のことを指す。訓練や座学を通して、業務に必要な知識や技能を身につけ、実務経験を積む。訓練期間中は手当が支給され、訓練後の就職も約束されている。

実際、こうした見習い訓練を終えたアメリカ人の10人に9人が仕事を得ており、平均初任給は年約6万ドルと高額だ。一般的な大卒者の初任給、5万2千ドルを大きく上回る。アプレンティスシップを活用した企業では生産性が上がり、離職率も下がるという報告もある。企業側にとっても効果的な制度だ。

しかし、米国内で訓練を受けている人数は2016年度でおよそ50万5000人しかいない。求人数の600万と比べても少ないことが分かる。トランプ氏は、訓練制度が活用されない理由が政府による規制にあると考え、自由化を推し進める方針を示した。

「稼げる人」を増やすために

アメリカにおける大卒者と高卒者の給料格差は拡大している。

米調査会社センティア・リサーチが2016年10月に発表したデータによると、高卒白人男性の1人当たりの収入は1996年から2014年までの間で8.9%減少した。一方、大卒以上の白人男性の収入は同時期に22.5%増加したという。

AIが著しく発達する中、ハイレベルな技術や知識を身につけなければ、どんどん給与が下がる時代になってきている。これは、アメリカのみならず日本でも同じことが言えるだろう。「稼げる人」と「稼げない人」の差が大きくなる中、「稼げる人」を増やすためには、技術や知識の取得の場が必要だ。

アプレンティスシップの発想を日本で活用するとすれば、例えば、定年退職した高齢者の再就職などが考えられる。働く意欲のある高齢者に対して、技術や知識を習得する場を提供することで、スムーズに再就職できるようになるだろう。

2025年、日本は4人に1人が75歳以上という「超高齢化社会」に突入する。そうした時代を生き残るためにも、アプレンティスシップの発想に学ぶことは大きい。

(片岡眞有子)

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