《本記事のポイント》

  • トランプ米大統領が就任100日目を迎えた
  • メディアはその政策や成果を批判
  • 外交の成果はすでにオバマ政権の8年を超えた

トランプ米大統領は、29日をもって、就任100日目を迎えた。各紙は、このことを大々的に報じ、総括を述べている。多くは、トランプ氏の政策について、一貫性がなく、陰りが見え始めていると主張しているが、本当にそうだろうか。各紙の論調を整理しつつ、トランプ氏の成果について冷静に見てみたい。

経済政策のメディア評価は「期待の低下」

トランプ政権の経済政策に対する各紙の評価は、大まかにまとめるとこうだ。

  • トランプ相場による景気回復と好調な株価の推移は、最近になって勢いに陰りが出てきており、期待がしぼんでいることがうかがえる。今後の継続に疑問がある。

  • 27日には減税案も発表したが、財源について明確な根拠がなく、実現性に大きな不安を抱える。財政健全化を求める共和党議員からも反発の声が上がっており、早くも空中分解に向かっているようだ。

アメリカに財源問題など存在しない

トランプ氏の経済政策への批判の多くは、財源に対する懸念である。実は、この手の批判は、アメリカにおいてほとんど意味をなさない。なぜなら、ドルは世界基軸通貨であり、世界中で需要が尽きないからだ。どれだけ供給しても、ドルを欲しがる人がいるので、価値が暴落することはありえない。いざとなれば、ドル札を刷るだけで、財源問題は終わる。

アメリカにとって、雇用の創出とGDPの改善の方がはるかに重要な課題であり、トランプ氏はこのことを理解している。トランプ氏による税制改革案も、法人税を引き下げ、企業を国内に呼び寄せ、雇用を創出することを狙ったもの。この効果で経済成長が続けば、税収自体も増大するので、長期的にはむしろ政府の財政状況は健全化していく。

トランプ氏による経済効果は減退どころか、これからが本当の始まりである。

外交面のメディア評価は「混乱を招いた」

外交面における各紙の評価をまとめると、およそ次のようなものだ。

  • トランプ氏は選挙期間中、孤立主義を掲げ、「アメリカは世界の警察官にはなれない」と述べていたにもかかわらず、シリアへ攻撃し、北朝鮮へ圧力をかけるなど、世界中に干渉し、混乱を引き起こしている。

  • さらには、当初離反を表明していた北大西洋条約機構(NATO)に歩み寄ったり、敵対的であった中国に対して最近は融和路線を進めるなど、一貫性にかけ、明確な戦略が存在していない。何をするか分からず、世界の破壊者になりかねない。

トランプ外交を貫くのは、戦略ではなく信念

メディアにとっては、このようなトランプ氏の変貌が、一時の感情に支配されているように見えるのだろう。しかし、トランプ氏の外交は、「神の正義を実現する」という理念において、一貫している。

シリア攻撃後に、「(シリア国民は)極めて野蛮な攻撃で残酷に殺された。いかなる神の子も決してそのような恐怖を経験すべきではない」「世界の困難に直面する中で、神の叡智を求めたい」と述べたことからも、トランプ氏が強い信念をもとに判断していることが分かる。

これは、外交面において早くも「強いアメリカ」が復活したということだ。実際、アメリカの圧力を受け、シリアや北朝鮮の動きは、明らかに慎重なものになった。オバマ政権下の8年で悪化したこの問題に対して、わずか100日で彼らの動きを抑えているトランプ氏の手腕は見事である。

100日間の政権運営のメディア評価は「一貫性に欠ける」

この100日間の政権運営についての各紙の論調は、まとめると次のようなものになる。

  • 戦後の大統領で最大となる30件の大統領令を発表したが、オバマケアの廃止、テロ多発国からの入国禁止など、100日プランで掲げた公約の半分以上が頓挫,もしくは宙づり状態であり、実行力に疑問が残る。

  • 支持率も、過去の大統領に比べ最低水準。一方、選挙においてトランプを支持した人の94%は、依然トランプを支持している。それは、アメリカ国内の分断の様相が一層深まっているということでもある。

メディアに負けないトランプの実行力

トランプ氏はこの100日間、議会・メディアとの対立を続けている。通常、大統領就任後100日間は「ハネムーン期間」と呼ばれ、議会もメディアも批判を控えるもの。過去の大統領と比べ、明らかに不利な立場にあるトランプ氏に対し、100日時点での支持率を比べるのはフェアではない。

そもそもトランプ氏は、メディアと全面対決をして勝利を収めた初めての大統領である。さらに、議会の反発、裁判所による大統領令の差し止めを受けながら、100日でやってきたことを考えると、その実行力は、他の追随を許さないのではないか。

交渉人・トランプの革命に続け

トランプ氏の本質は、「未来が見えている人」であり、「最強の交渉人」である。数カ国を同時に相手にし、軍事面と経済面でアメとムチを使い分け、自身にとって望ましい方向に世界を誘導している。それを理解できなければ、言うことがコロコロ変わり迷走しているように見えるということなのだろう。

その成果は、すでに現れている。例えば、習近平・中国国家主席に対し、北朝鮮に対する制裁を求め、実行させたのはトランプ大統領が初めてである。また、シリアの化学兵器使用に対して攻撃したことは、非人道的行為は許さないという世界への強烈な意志表示となり、シリア、北朝鮮、中国、ロシアの4カ国を文字通り一発で黙らせた。

さらにこれから成果が出てくる政策も多い。「トランプ革命」は、まだまだ始まったばかりであり、この影響はさらに強くなっていくだろう。世界の潮流が大きく動こうとしている今、日本も、この革命に合わせて舵を切っていくことが、今後の繁栄に不可欠である。(和)

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