《本記事のポイント》

  • 北陸新幹線による経済効果
  • 「田園都市」を「都心」に変えた新横浜駅の開発
  • 地方の雇用創出のカギを握る新幹線網の整備

日本銀行はこのほど、全国9地域のうち、東海と北陸の2地域で「景気が緩やかに拡大」とした地域経済報告(さくらリポート)を公表した。「拡大」を複数地域に使うのは2008年4月以来のことで、北陸は05年以来はじめて。

北陸の景気が拡大した背景には、北陸新幹線の延伸関連の公共事業が増えたことや、開業に伴い国内外からの観光客が大幅に増えたこと、またスマートフォン向けなどの電子部品生産の増加がある。

北陸新幹線による経済効果

日本政策投資銀行北陸支店の発表によると、2015年3月の開業1年での新幹線の利用者数は926万人と、当初の予想を大幅に上回った。石川県内の経済波及効果も約678億円にのぼり、今後も同程度の効果が続く見込みだという。

また、新幹線の開通に合わせて企業の進出も進んだ。

ユースキン製薬は富山市の工場団地に建設した新工場を16年4月から稼働している。稼働当時に発表したニュースリリースでは、進出の理由について「北陸新幹線の開通により交通の便が良くなることも決定要因の一つです」と明らかにしている。

北陸を訪れる観光客の数も格段に増加した。開業前の1カ月は30万人弱だったのが、開業後は1カ月平均で77万人となっている。

さらに北陸地方では、生産された製品の量を示す鉱工業生産指数も、この2年間で上昇。雇用者の増減を示す雇用情勢は、開業前は1.5弱だったが、今年1月には1.78まで上昇しており、全国平均の1.43を大きく上回った。

交通網の整備は、地域の経済活性化や雇用創出に好影響を与えていることがよく分かる。

「田園都市」を「都心」に変えた新横浜駅の開発

さらに駅周辺の開発が、街を大きく発展させる例もある。

例えば、東海道新幹線の新横浜駅は、1964年の開通当時は田園風景の広がる地域で、各駅停車の「こだま」しか停車しなかった。

同駅周辺は、開発が進んでいない土地があることを逆手にとり、東京都内では立地が難しい大規模な商業施設や、アリーナ、スタジアムなどのイベント会場、高層マンションなどの建設を呼び込んだ。

開発が進むと、ひかりの停車本数が徐々に増え、92年からは「のぞみ」も停車。そして2008年からは、東海道新幹線の全列車が停車するようになるなど、新横浜駅は、横浜駅周辺地区と並ぶ「都心」に指定されている。

新横浜駅は、東京にはない機能をつくることで発展し、新幹線の停車本数も増えていったわけだ。

地方の雇用創出のカギを握る新幹線網の整備

新横浜駅のように、富山駅や金沢駅の機能を充実させることができれば、さらなる経済効果を生む可能性がある。

政府としては、人口減少による利用者減を恐れず、雇用創出のためにも、国家全体のインフラ計画を積極的に進めていくべきだ。それぞれの地域の持つ特性を強みへと変え、地方を発展させる構想が求められる。

(HS政経塾 坂本麻貴)

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