《本記事のポイント》

  • 亀山シャープ工場が従業員の倍増を発表
  • リニア駅建設との相乗効果で、地元がさらに潤う?
  • 工場誘致と交通革命の掛け合わせが「地方創生」の鍵

シャープが亀山工場の人員を倍増することを明らかにした。昨年12月時で2千人のところ、期間労働者を含めて4千人まで増やす意向だ。亀山工場は液晶パネルの主力拠点だが、液晶パネルの生産ラインの増設や、新事業展開のため増員するという。

シャープは電子デバイスやカメラモジュール以外の製品の組立工程は、人件費の安いホンハイ精密工業グループへの移管を進めている。

一方、国内工場は自動化することで生産の効率化を図っている。2017年度中には亀山工場に80型以上の大型テレビの生産も集約させ、他の液晶テレビの増産とも合わせて、コスト競争力を高める方針だ。

新事業として進めるスマートフォン用のカメラ部品の組み立ては、手作業が必要となるため、増員が必要となっている。(6日付日経新聞)

亀山市にとっては、朗報だろう。

「世界の亀山」の地元経済への効果

シャープの亀山工場は、県と市によって誘致され、2004年に稼働を開始した。シャープを呼び水に、亀山市には凸版印刷や日東電工など、関連企業が40社以上進出し、産業集積地を形成している。

2004年以降、市の工業就業者は急増し、製造品出荷額は2008年までの4年間で、およそ4倍となった。

また、法人住民税・法人事業税や固定資産税、住民税(いずれも地方税)などを合わせ、市の税収は倍増した。その結果、亀山市は2005年度から2011年度まで、国から補助金を受けず、財政を自立させることに成功した。

亀山にリニア駅建設の可能性

もう一つ、亀山の発展がさらに見込まれる理由が、リニア中央新幹線の新駅建設予定地となっていることだ。

現在JR東海は、名古屋以降の中間駅について正式には発表していないが、「1つの都道府県に一駅つくる」という方針から、三重県では亀山市に中間駅が建設される可能性が高い。

現在、三重県には、大都市圏とつながる新幹線網が通っておらず、インフラ整備が大きな課題となっている。例えば、亀山駅から名古屋駅まではJR関西本線で1時間20分前後かかり、本数も少ない。またその他の公共交通機関といえばバスくらいだが、行き先によっては1時間に1本程度しか運行していない。

もし亀山市にリニアが開通すれば、シャープ工場の経済効果と相まって、地元はさらに潤うだろう。

全国の地方創生も「亀山式」で

亀山のように、「工場誘致」と「交通革命」の掛け合わせで、全国の地方創生の方途が描けるはずだ。

亀山市の場合、「工場誘致」は地元自治体の尽力によるものだった。もちろん、全国で誘致合戦をすれば、単に工場の取り合いになる。ここは日本政府が、減税や規制緩和などを通して、中国などに出て行ってしまった工場を国内回帰させてもいいだろう。工場なら、都心より地方の方が立地として有利だ。「東京一極集中」を気にすることなく、各地に雇用を生める。

また、「交通革命」については、リニア新幹線の大阪までの延伸を急ぐのみならず、全国にリニア新幹線網を敷きたいところ。

三菱UFJの政策研究レポートでは、リニアを大阪まで同時開通した場合の経済効果は17兆円と試算している。また別の試算では、1兆5800億円の経済効果を毎年生み出していくともいわれている(※)。敷設の際は、民間企業から「未来産業債」や「リニア事業債」というようなものを募ることもできる。

工場の国内回帰と、大規模なインフラ投資といえば、アメリカのトランプ大統領の経済政策そのものだ。世界の中心で、実際に始まっている経済政策が、地方を救う鍵になるかもしれない。

(※)市川宏雄著2013『リニアが日本を改造する本当の理由』メディアファクトリー 参照

(HS政経塾 坂本麻貴)

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