試乗したリニア。騒音を抑える前方の「ノーズ」部分は15メートルの長さ。
2027年、東京~名古屋間にリニア新幹線が開通予定です。現在、新幹線で1時間40分程度かかる東京~名古屋間が40分で結ばれます。2045年には、現在2時間半かかる東京~大阪間が1時間で結ばれます。経済活動に与えるインパクトはかなりのものになるはずです。
営業運転開始に向け、JR東海は、現在、山梨県にある実験線で走行試験を含めたさまざまな実験を行っています。このたび、その実験の一環としてJR東海が開催している、リニア体験試乗会に参加することができました。
体験乗車前のセキュリティチェック
体験乗車会の会場に行くと、飛行機に乗るときと同じようなセキュリティチェックがありました。
「試験目的の施設・車両で実施するため」とのこと。実験用の車両は2両で、飛行機と同じく閉鎖性が高いからという理由でしょう。
安全は大事ですが、リニア新幹線の営業運転の際にも同じようなセキュリティチェックが導入されると、時短のメリットがなくなるかもしれないと思いました。
続いて、乗車時の注意点についての説明と紹介映像が流れます。映像には「世界に誇る日本の技術」といった趣旨の言葉が出てきましたが、「それならなぜもっと早く開通できなかったのか」と、軽く突っ込みたくなりました。
新幹線よりも静かで揺れが少ない?
500キロに達した瞬間の車内の様子。
映像の上映が終わるといよいよ乗車です。実験用車両のため多少狭いのですが、シートの座り心地は新幹線並みでした。
体験乗車は約30分。全長42.8キロの実験線を往復し、営業運転で予定されている最高時速500キロの速度を体験します。
まずは前に進みます。通常の新幹線よりも加速は多少早い感じがしました。最初はタイヤで走行し、加速するとタイヤが格納され、浮いた状態で走行します。タイヤが格納されると、明らかに体に伝わる振動は変わりましたが、浮き沈みの感覚はほぼありません。非常にスムーズです。
その後、後方に進みます。次第に加速し、時速500キロに達したときも、車内は静かでした。新幹線の車内で電話を取ると相手の声が大変聞こえにくいですが、新幹線よりも振動や車内の騒音が抑えられているように感じました。
飛行機の離陸時は、時速240~300キロのスピードが出ているそうですが、その振動や騒音に比べ、新幹線やリニアの乗り心地は驚くべきものです。
スピードが出ている分、減速時には通常の新幹線よりは強めの慣性力を感じますが、シートベルトなどは要らないレベルです。現在の新幹線の営業速度は、時速280キロから300キロだそうですが、500キロを体感して300キロに戻ると、「あれ、新幹線ってこんなに遅かったっけ」と感じてしまいました。
再び前方、後方に進み、体験乗車は終わりました。
交通機関の選択肢を広げるために
唯一残念な点を挙げるとすれば、実験線はほぼトンネル区間なので、景色が楽しめないということ。実際にリニア新幹線が走る区間も地下ですので、「車窓からの景色が旅の楽しみ」という方は寂しいかもしれません。また、気圧の変化で耳が痛くなりやすい方は、多少辛いかもしれません。
とはいえ、早く目的地に着きたい人、ゆったりと鉄道の旅を楽しみたい人、さまざまなニーズがあるわけですから、リニア新幹線開通によって、交通機関の選択肢が格段に広がることは喜ばしいことです。
駅から実験場まで乗ったタクシーの運転手さんが、「リニアの実験場が来る前は、このあたりは何もなかった」と話していました。地元の方にとっては、ちょっとした観光スポットができて経済的恩恵がもたらされたのかもしれませんが、何年も実験だけを繰り返しているのでは虚しすぎます。
日本経済に巨大なインパクトをもたらす技術ですから、一企業の経営レベルの話で論じるのはもったいないことです。日本中の人たちに最新技術の恩恵をもたらすため、政府による思い切った資金投資や融資により、少しでも開業を前倒してもらいたいものです。
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