サウジアラビアにあるイスラム教の聖地メディナ
《本記事のポイント》
- 日本企業がサウジへのインフラ整備と投資を進めている
- サウジは、働くことへの意識と前近代的な司法制度を変えるべき
- 日本とサウジはwin-winの関係を築ける
日本企業のサウジアラビア進出が進みそうだ。サウジのサルマン国王の来日を機に、日本とサウジは政府間で11、民間で20のプロジェクトに合意した。
政府間においては、安倍晋三首相とサルマン国王は13日に会談し、「日・サウジ・ビジョン2030」に合意。互いを「戦略的パートナー」と位置付け、日本企業のサウジ進出を容易にする「特区」をつくることで一致した。
民間では、トヨタ自動車は車や部品の現地生産を検討し、三菱東京UFJ銀行など3メガ銀行は投資促進の提携を決めた。東洋紡は淡水化プラントの技術開発で協力することで合意し、ソフトバンクグループもサウジ系ファンドと共同で巨額ファンドの設立を計画している。
新産業をつくろうとしているサウジ
これまでサウジは石油収入だけで経済が成り立っていた。そのため国内に産業が育っておらず、さまざまな規制によって外国企業の進出も阻まれてきた。だが、最近は石油価格が低迷し、サウジの財政赤字は膨らんでいる。
危機感を覚えたサウジは「石油頼み」から脱却を果たすため、外資を誘致して産業を多角化しようとしている。サウジが目下、進めようとしているのが「インフラ整備」と「投資の呼び込み」だ。
そもそもサウジはインフラ整備が不十分で、電気やガスも安定供給されていない地域があり、都市間交通網も整備されていない。今回合意したプロジェクトによって、サウジのインフラ整備が進められることになるだろう。
また、サウジは外国からの投資を呼び込み、「投資立国」に生まれ変わろうとしている。サウジ国営で世界最大の石油会社、サウジアラムコも新規株式公開を行い、株式の5%、10兆円規模が売り出される予定だ。
日本企業が進出してインフラ整備をしたり、投資したりして、サウジの近代化を後押しするのはよいことだろう。
サウジが変わるべき2つの点
サウジは新たな国に生まれ変わろうとしているが、石油依存以外にも変わらなければいけない点がある。
1つ目は、サウジ人の働くことに対する意識だ。これまでサウジ国民の約7割は公務員で、給与も安定。労働時間も極めて短く、サウジの閣僚は「(公務員の労働時間は)1時間を超えない」とも発言していた。つまり、サウジ人の大多数はほとんど働かなくとも暮らしていくことができた。そのため、サウジの"働き方改革"は難航が予想される。
資源が乏しいために、コツコツとした努力と智慧によって、大きな産業をつくり、経済発展した国といえば、他ならぬ日本だ。経済協力するだけでなく、二宮尊徳に代表されるような「勤労の美徳」を伝えることも、日本の大事な役割になるだろう。
2つ目は、コーランに基づくイスラム法によって国の統治が行われているため、サウジの近代化が遅れている点だ。
酒やポルノを持ち込めば重刑が科され、窃盗すれば手首が切断される。殺人や麻薬使用、同性愛は死刑だ。ヨーロッパに留学したサウジの王女は、ある男性と恋人関係になって、石打の刑で殺された。こうした前近代的な司法制度が続いており、人権は蹂躙されている。
サウジの司法制度は、時代の変化に合わせて変える必要がある。それには、状況は違うが、日本の明治維新が参考になる面もあるはずだ。日本は明治政府のもと、天皇を中心としつつ、近代的な民主主義体制をつくることに成功した経験がある。しかも日本は、イスラム教国と対立するキリスト教国ではないため、サウジも日本からの助言に耳を傾けやすいはずだ。
日本には石油はないが技術はあり、新たな投資先を探している。サウジには石油はあるが最先端の技術がなく、投資が欲しい。そうした日本とサウジであれば、win-winの関係を築くことができるだろう。この関係を、日本の中東の平和への貢献につなげていきたいところだ。
(山本泉)
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