ピューリッツァー賞を3度も受賞し、『レクサスとオリーブの木』などの著書が日本でも知られている世界的ジャーナリスト、トーマス・L・フリードマン。彼が9日付けインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に、エジプトの首都カイロの様子を現地から伝える、力の入ったコラムを寄せている。中東問題を長年取材し、リベラルな傾向の強いフリードマンだけに、希望的な見方は多少割り引いて受け取ったほうがいいかもしれないが、「恐怖は去った」(Fear is gone)と題するそのコラムから抜粋して紹介する。

・自分は40年間、中東問題について書いてきたが、いまタハリール広場で起きているようなことを見るのは初めてだ。50年間にわたり、石油、独裁政治、そして宗教的愚民政策(religious obscurantism )に押しつぶされてきたこの国に突如、本物の自由な場所が生まれ、人々が声高に自由を叫んでいる。

・ある50代のエジプト人男性は自分にこう言った。「チュニスの動きは我々へのメッセージになった。『焼身自殺などしてはいけない。内なる恐怖をこそ焼き捨てろ』というメッセージだ。エジプトは恐怖が支配する社会だったが、その恐怖はもはや焼き捨てられた」

・また、カイロ大学のある教授はこう言った。「エジプト人は皆、自分たちの国が非常に古い歴史に根ざす偉大な国だと思っている。だがムバラク政権は、アラブ世界と全世界における我々の尊厳を破壊した」。具体的な社会問題としては失業問題が大きく、大学を出ても仕事がない若者がたくさんいる。

・何らかの揺り戻しはあるだろうが、エジプトが変わったのは確かだ。今や流れ始めた自由の川(the river of freedom )はナイル川のように、曲がりくねることはあっても干上がることはないだろう。

平均的日本人は、エジプトの国情をメディアを通して抽象的にしか知ることができないが、現場に立ったフリードマンの目には、エジプト社会がついに「恐怖からの自由」を手に入れたと見えているようだ。あらゆる政治問題における最大のキーワードの一つである「自由」をめぐり、エジプトがどんな道を歩んでいくか見守りたい。(T)

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