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《記事のポイント》
- トランプ大統領は、難民引き受けについての米豪の合意を見直そうとしている。
- トランプの真意を正しく理解できない日本は、今までの関係を崩したくない。
- 日本外交には哲学が必要。
トランプ米大統領と、マルコム・ターンブル豪首相の電話会談が話題を呼んでいる。米紙ワシントン・ポスト(電子版)が2日報じた。
同紙によれば、電話会談は当初1時間の予定だったが、トランプ氏が突然打ち切り、25分で終了したという。また、トランプ氏は「最悪の電話会談だ」と語ったとされる。
争点になったのは、難民引き受けに関する米豪の合意だ。合意の内容は、オーストラリアに密航し、ナウルとパプアニューギニアの施設に収容された難民を一部アメリカが受け入れるというもので、オバマ前米政権とオーストラリア政府間で結ばれた。
会談後、トランプ氏は自身のツイッターで「信じられるか? オバマ政権は、オーストラリアから何千人もの不法移民を受け入れることに同意した。なぜだ? この合意に関して調べなければならない」と発信した。
ターンブル氏は、電話会談後の記者会見で、「トランプ氏と合意継続を確認した」と述べ、トランプ氏が電話を一方的に切ったとする報道についても「正しくない」と否定している。
今回の電話会談の詳細が、食い違っている理由は不明だが、トランプ氏が国益のためには外交の摩擦も辞さないという姿勢は一貫している。
「メキシコとの間に壁を築く」という大統領令に署名したことで、米メキシコの首脳会談が流れたことは記憶に新しい。
現状維持の安倍首相
トランプ氏が「アメリカ・ファースト」という哲学を外交の中心軸に立てている中、日米外交の方針にも転換が求められる。
2月10日には大統領就任後初となる日米首脳会談が予定されている。安倍晋三首相はこの会談に向けて、アメリカでの雇用創出やインフラ整備などに、日本がどのように協力できるのか意見を交わしたいという考えを示した。
トランプ氏は、アメリカに車などを輸出する日本企業に対して「アメリカから雇用を奪っている」と批判している。安倍首相の考えの背景には、最大貿易相手国であるアメリカと、今までのような関係を何とか維持したいという思惑が垣間見える。
だが、トランプ氏は、そう簡単に貿易に対する考え方を変えることはないだろう。
トランプ政権下の日米関係
日本は、世界有数の経済大国となった今、アメリカに製品を売って稼ぐという方針からの転換を迫られている。アメリカの動向に翻弄され、その場限りの方針を打ち出せば、国益を損ねかねない。
哲学なき外交では、国民の生命と財産を守るために、他国との軋轢や摩擦も辞さないというトランプ氏の強さにのみこまれてしまう。
日本が今後どのように国を動かしていくのかを明確に発信することが求められるだろう。
(片岡眞有子)
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