2016年9月、ASEANサミットで初会談した際の日比両首脳。
By King Rodriguez (Presidential Communications Operations Office)

フィリピンのドゥテルテ大統領は3日間の訪日を終えて27日夜、帰国した。「実り多かった」「日本はこれまでも、今後もフィリピンの真の友人だ」と発言。今回の訪中、訪日での発言は、二転三転する部分もあったとはいえ、日本、中国、アメリカに対する考え方の方向性はずいぶん明らかになったと言えるだろう。

ドゥテルテ氏と安倍晋三首相との会談では、中国がほぼ全域の領有権を主張する南シナ海問題について、「法の支配に基づき、平和的解決に向けて協力する」ことで合意した。

先週、中国を訪れた際には、ドゥテルテ氏は南シナ海における中国の権利主張を否定した仲裁裁判所の判決について、「ただの紙切れだ」と記者団に答えていた。しかし日本に来ると一転し、その判決は拘束力があるとの認識を示した。さらに、「時が来たら、我々は常に日本の側に立つつもりだ」「忠誠なる日本のパートナーであり続ける」と、親日的な姿勢をアピールしている(27日付読売新聞)。

中国におもねる発言と一貫した反米姿勢

ドゥテルテ氏は先週、中国の習近平国家主席と北京で会談したが、南シナ海の領有権争いについては棚上げし、経済問題に重点を置いた発言をしていた。

北京で開かれたビジネスフォーラムで演説した際には、「軍事的にも経済的にもアメリカと決別する」と発言。さらに、「今後長い間、中国が頼りだ。中国にとってももちろん利益があるだろう」とも語っていた(21日付CNN)。こうした親中的な姿勢を示し、中国から、投資、援助、借款などで計240億ドル(約2兆5千億円)もの経済支援を取り付けた。

その反面、反米姿勢が際立ってきている。来日中にも、「フィリピン駐留米軍の2年以内の撤退を望んでいる」「必要であればアメリカとの防衛協定を破棄する用意もある」と語っている。

もちろん、どこまでが本心かは本人のみぞ知るところだが、これまでの発言から推察すると、ドゥテルテ氏の姿勢は「親日、親中、そして反米」となる。

日本は独自外交でフィリピンを味方に

フィリピンとアメリカ、フィリピンと中国の関係は、南シナ海を通って様々な資源や製品を輸入している日本にとっても死活問題だ。

では、日本はどうすべきだろうか。現段階では、中国とフィリピンは経済的な友好関係を強めている。しかし日本は、質の高いものづくりの技術力、法の支配に基づく民主主義の価値観を共有できるなど、中国にはない強みがある。これらをアピールすることで、フィリピンが過度に中国寄りになることを防ぐことができるはずだ。

急速に冷え込んでいるアメリカとフィリピンとの関係については、安倍首相も日本がその橋渡し役となると強調している。これまで日本は、外交においてもアメリカに追随してきた部分が大きい。ドゥテルテ氏は「それは日本の問題。私に重要なのは比日関係だ」と答えるにとどめているが、日本がアメリカと全く同じ立場をとることは賢明とは言えない。

ドゥテルテ氏は帰国後の会見で「『もし、あなたが人をののしるような言葉を使うことをやめなかったら、この飛行機を落とす』という声が聞こえた」「その声は神のものだった。神に誓ってこれからはののしるような言葉は使わない。神への誓いはフィリピンの人たちへの誓いだ」と発言した。

今後、ドゥテルテ氏の発言の変化に注目が集まりそうだが、これまでの過激発言の奥にある本心を理解できるのは日本かもしれない。日本はいっそう、アジアのリーダーとして、独自外交を展開する必要がある。

(小林真由美)

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