北朝鮮と韓国の軍事境界線(38度線)上にある、板門店共同警備区域。写真奥が、北朝鮮側。

アメリカ下院本会議が9月28日、2004年に中国で行方不明になったアメリカ人男性が北朝鮮に拉致されている可能性があるとして、日本などと連携して本格的に調査するようアメリカ政府に求める決議を採択した。

男性は、ユタ州出身のスネドン氏。当時24歳の大学生だった。韓国留学の後の帰国途中、中国を旅行し、雲南省で行方不明となった。

日本の拉致問題の「救う会」が、中国側から得た「雲南省の同地域では当時、北朝鮮工作員が暗躍しており、アメリカ人青年を拉致した」という情報をスネドン家などに提供したことで、北朝鮮拉致疑惑が一気に高まった(9月30日付産経新聞)。

下院本会議は、核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対し、人権問題でも圧力を強める狙いがあるとみられている。

日本政府の拉致問題への対応は不十分

日本では1970年ごろから80年ごろにかけて、北朝鮮による拉致が多発した。現在、17人が政府によって拉致被害者として認定されている。また、特定失踪者問題調査会などからは、被害者の数は百人単位に上るとの見解も出ている。

在日朝鮮人の帰還事業で北朝鮮に帰国した在日朝鮮人と、その日本人配偶者や子孫は、北朝鮮にある政治犯収容所で凄惨な虐待を受けているという指摘もある。

北朝鮮は、日本側の要請で拉致問題の特別調査委員会を設置していた。しかし2016年2月、北朝鮮が強行したロケット発射実験を受けて日本政府が独自制裁措置を決めると、北朝鮮はこれに反発し、特別調査委員会の解体を一方的に発表した。

日本政府はその後も北朝鮮に拉致問題の調査を求め、解決に向けた対話を続けてきたが、明確な成果は上がっていないのが現状だ。

日米での連携で効果的な解決策を

今回の下院の決議を受け、アメリカが北朝鮮による自国民の拉致を認定し、本格的な調査を行い、その奪回を目指すようになれば、日本にとっても強力な支援となる。

アメリカは、自国民の生命にかかわる問題については、軍事力を使ってでも救出するという気概を持っている。米政府が拉致を認定した場合、その後、問題が解決しなければ、被害者救出のために特殊部隊を送り込む可能性もあるだろう。

実際に、米空軍は、北朝鮮が核実験を強行するたびに、軍事力を誇示してきた。北朝鮮が4回目の核実験を実施した今年1月には、グアム基地からB52爆撃機を朝鮮半島上空に派遣。9月に5回目の核実験を実施した直後にも、B1爆撃機2機を発進させ、韓国上空を飛行させた。

日本も、対話が通じない北朝鮮に対しては、アメリカと協力して金正恩独裁体制の崩壊を見据えた、具体的な行動を起こすべき時期に入っている。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『北朝鮮・金正恩はなぜ「水爆実験」をしたのか』 大川隆法著

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