11月の米大統領選に向けての第1回目討論はクリントン氏の勝利に終わったと報道されている。しかし、果たしてそうなのだろうか。

共和党候補トランプ氏と民主党候補クリントン氏の第1回目テレビ討論は、アメリカ国内の視聴者数が約8090万人に達し、過去最多となった(28日付ロイター)。討論はニューヨーク時間で26日午後9時に始まり、1時間38分に渡り続いた。11月8日の投開票日に向けて、10月9日と19日の2回、討論会が開かれる予定だ。

今回の討論のテーマとして挙げられたのは、「経済・通商政策」「安全保障・外交」「人種問題・銃規制」「大統領としての適性」などだ。

経済政策については、トランプ氏が「減税」を掲げるのに対し、クリントン氏は累進課税によって中間層へのサポートを行うとした。

安全保障に関しては、トランプ氏は日本や韓国、ドイツなどの同盟諸国に対して、アメリカの軍事的貢献に見合うだけの金銭が支払われなければ、これ以上同盟国を守ることはできないとした。一方、クリントン氏は日韓の同盟を改めて保証するとし、同盟諸国との連携の強化に言及している。

TPPに関しては両者反対の立場だが、トランプ氏は、クリントン氏がオバマ現大統領の国務長官としてTPPを推進してきた事実を指摘している。

クリントン氏優勢とする日本のメディア

多くの日本メディアは「クリントン氏優勢」と報じている。その裏付けとして取り上げられているのが、CNNの世論調査だ。これはCNNによる、「トランプ氏とクリントン氏、どちらが今回の討論で勝利したか」という電話での世論調査で、62%の回答者が、クリントン氏が勝利したと回答したとするものである。

ただ、ネットを中心としたアメリカの他のメディアでは、異なる結果が出ている。

米タイム誌のウェブサイトでは「どちらの候補者が勝つと思うか」という問いに対し、約200万の回答のうち、55%がトランプ氏と回答した(28日15時時点)。また、米放送局CNBCのウェブサイト上での同様の質問に対しても、約120万の回答が集まり、67%がトランプ氏と答えている(28日15時時点)。米ワシントン・タイムズ紙、米フォーチューン誌による同様の調査でも、トランプ氏が優勢であるとしている。

電話調査とネット調査という違いがあるものの、両者の勢いはまだ読み切れない。

スピーチ力のクリントン。柔軟に変化するトランプ。

確かに討論会においては、クリントン氏が議論を主導したことが注目を集めた。クリントン氏は、サブ・プライムローン問題が起こった際に、不動産市場の崩壊に対して「金儲けができる」と表現したトランプ氏を非難。「それがビジネスだ」というトランプ氏の発言に対して、「900万人が失業し、500万人が家を失い、13兆ドルが失われた」と攻撃した。

ただ、クリントン氏はトランプ氏の暴言を引き出すかのような質問を投げかけたが、トランプ氏はその挑発には乗らなかった。「『トランプ大統領』はあり得ない」という印象からは脱却しつつあるようだ。大統領の器となるべく自らを変革させてきたトランプ氏の柔軟性が伺える。今回の討論では、クリントン氏の方が有利になりやすい質問が多かった、との指摘もある。

第1回目討論を終えた今、両陣営の支持率は拮抗しており、目が離せない。大統領選まで残すところあと1カ月、最後まで見届けたいものである。(片)

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