新聞記事やテレビの報道番組が、暗い話題で埋め尽くされる日は少なくない。
しかし実際、世の中には明るい出来事も無数に存在する。その中から何が取り上げられるかには、マスコミ各社の考え方が反映されている。
暗い報道が増えがちになる背景について、元テレビディレクターのA氏に話を聞いた。
「闇の部分に光を当てる」
――現場では、どのように番組を作っていたのでしょうか。
A氏: 番組の企画を通す際、「なぜ、そのテーマを取り上げる必要があるのか」を突きつけられます。その時、誰かが困っているとか、泣き寝入りしているとか、不安が広がっているという内容の方が、大義名分になりやすいんです。
するとそれは、必ず物事のマイナス面を大きく取り上げるということになるんです。「物事には必ず闇の部分がある。その陰の部分に光を当てるのが我々の存在価値だ」という価値観の下、番組が作られていたように感じました。
私がテレビ局で働いていたバブル期には、例えば高級外車が売れているとか、ディスコが開店したとか、高級ワインが売れているとか、景気のいい話が沢山ありました。しかし、それでは「マスコミとしての存在意義はない」わけです。社内でも「景気が悪くならないと、仕事にならないね」という話をよくしていました。
そんな中、悲しみに寄り添う番組を作る人の評価はとても高かったです。「こんなにも悲しみに寄り添って、すごいな」と、みんな言っていました。
つまり、「苦しんでいる人=正義」であり、「弱者=正義」。だから、それを踏みにじる強者は悪。例えば、強大な軍事力を持つイスラエルは悪で、攻撃される側のガザ地区は正義など、何でもそうです。
そのため、取材相手の意図とは関わりなく、番組が「悲劇」のシナリオで編集されてしまうことがありました。
ある時、手作りのイカダでレースに出る海苔漁師の一夏を追う番組を作ったことがあります。取材した場面、印象のまま、イカダづくりの工夫や家族の応援などを取り上げ、ホノボノとした番組にしました。
しかし、上司からは、「この人たちは、海がどんどん汚染されて、生活の場が危機にさらされている。その不安をレースにぶつけているんだ」と言われてしまいました。現場を見てもいないのに……。
私は「そんな話は聞いていません」と伝えたのですが、事実確認もないまま、結局、悲しい印象を与えるように編集されてしまったのです。編集次第でいかなる印象を作ることもできるのだ、とショックを受けました。
「世界はどんどん悪くなる」という世界観
――先ほど、陰の部分に光を当てるという話がありましたが、逆にバブルの時代のように、世の中に明るいニュースが多い時、番組のネタはどのように探すのですか。
A氏: 貧しい人々のエピソードを取り上げた回顧番組をよく作っていました。他には、田舎暮らしを取り上げて、都会暮らしへの無言の批判につなげることもありました。ある意味、豊かな人へのやっかみです。
バブルの時も、社内では「いつまでも続かないですよね」「きっと落とし穴があるでしょう」と話していました。今、放映されている番組の内容から考えても、こうした考え方は、根本的には変わっていないように見えます。
◇ ◇ ◇
苦しんでいる人の姿や社会の陰の側面を取り上げることは、マスコミの使命の一つだ。しかし、「弱者=善」で、「強者=悪」であるというレッテルに基づく報道により、真実がゆがめられるという恐れもある。
マスコミには、民主主義の担い手としての公平な報道を期待するとともに、受け取る側にも、メディアの意図を読み解く「メディア・リテラシー」が求められている。
(山本泉)
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