2016年10月号記事
選挙が危ない
マスコミが選挙結果を決めている
東京都知事選では、選挙報道が"主要3候補"に偏りすぎているという問題が取り沙汰された。
マスコミ報道はいかにあるべきか。
(編集部 小林真由美)
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都政の透明化などを柱とした「東京大改革」を掲げ、小池百合子氏が新都知事に就任した。
東京都知事選のテレビの放映時間は、直前の参院選の約2倍。投票率も約60%と、多くの有権者の関心を集めた。
だが問題になったのは、21人が立候補したにもかかわらず、マスコミが、元防衛相の小池百合子氏、元総務相の増田寛也氏、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏を"主要3候補"として連日報じた一方で、他の18人をほとんど報じなかったことだ(図)。
本誌の調べでは、新聞5大紙のうち3紙では、18人を報じた記事は「皆無」だった(候補者名簿を除く)。また、テレビの放送時間は、18人合わせて3%しかなかった(NHKを除く)。
これに抗議した候補者有志6人は、放送倫理・番組向上機構(BPO)と民放テレビ4局に対して「選挙報道の公平性を求める要求書」を提出した。
民主主義を損なう偏向報道
選挙報道において、マスコミは投票前から、世論調査や当落予想と称して、「○○候補が優勢」などと誘導する。だがこれは、「人気投票の公表」を禁じた公職選挙法第138条の3に違反するのではないか。総務省選挙課に問い合わせると、「それは司法の場での判断になります」という返事だった。
こうした偏向報道は、新しく政治の世界に飛び込む個人や組織を「黙殺」し、既存の政党に有利な報道になっている。 まるで中国のマスコミと同じ「国営マスコミ」であるかのようだ。
本来、選挙で政治家を選ぶのは、マスコミではなく有権者であり、情報が正しく伝わらなければ、民主主義は機能しない。
マスコミが国民の「知る権利」を侵し、歪んだ情報を流し続けている今は、民主主義の危機と言える。
新聞3紙で"その他の候補"の記事は0%
朝日新聞
その他の候補 0%
主要3候補100%
毎日新聞
その他の候補 0%
主要3候補100%
産経新聞
その他の候補 0%
主要3候補100%
日本経済新聞
その他の候補 4%
主要3候補96%
読売新聞
その他の候補 12%
主要3候補88%
2016年7月18日~22日の5大新聞(朝刊)の都知事選関連記事。期間は下記のテレビ報道の調査に合わせた。
割合は、記事の中で3候補とそれ以外の候補を報じた文字数の合計(ただし、候補者全員の名簿は文字数に含めない)。
テレビ朝日 「報道ステーション」
その他の候補 3%
主要3候補97%
TBS 「NEWS23」
その他の候補 3%
主要3候補97%
フジテレビ 「ユアタイム」
その他の候補 2%
主要3候補98%
NHK 「ニュースウォッチ9」
その他の候補 46%
主要3候補54%
日テレ 「NEWS ZERO」
その他の候補 3%
主要3候補97%
2016年7月18日~22日の各番組の放送時間。割合は、候補者を映した時間などの合計。
マスコミは少数意見でも無視すべきではない カルドン・アズハリ氏
全体主義はメディア統制から
あらゆる政策を議論すべき