2016年9月号記事
第48回
釈量子の志士奮迅
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
「改憲」の話しが出ない「改憲選挙」
熱い参議院選挙が終わりました。東京都知事選候補に擁立した七海ひろこへのご支援と合わせ、心より御礼申し上げます。
残念ながら、国政進出とはならず、ご期待に応えられなかったこと、お詫び申し上げます。
蓋を開けたら争点は改憲!?
「争点はアベノミクス」と言われていたが、投開票後、各紙は一斉に「改憲勢力の大勝」と報じた。
衆参両議院で改憲勢力が3分の2を超えた今、改めて、憲法改正について考えてみたいと思います。
選挙前、安倍晋三首相はじめ自民党の各候補は、「争点はアベノミクスの是非」だとして、街頭演説などで、経済政策ばかり訴えていました。
ところが投開票を終え、蓋を開けてみると、各紙は一斉に、「改憲勢力が3分の2」の文字を一面に踊らせ、選挙総括としました。今回の参院選は、史上初めて、改憲を発議できる「国会議員の3分の2」確保を懸けたものだったのです。
しかし、「改憲」が本当の争点であると意識して、与党に票を投じた方が、どれだけいたのでしょうか。ここに誤魔化しがあったと言わざるを得ません。
また、一口に「改憲勢力」と言っても、「どの条項を、どう変えるのか」という点については、党によってバラバラです。
自主憲法の制定を党是とする自民党、特に安倍首相は、本音では憲法9条の改正を考えていることと思います。
しかし、連立与党の公明党は、9条改正について反対の立場です。自民党は、本当にこの党と共に改憲をするつもりなのでしょうか。
結局のところ、改憲勢力と言っても、何を変えるかの思惑は違うのです。
「お試し改憲」は全て裏目に
そんな中、「改憲勢力」がまず手をつけるのは、合意の得やすい内容で、国民を改憲に慣れさせる、いわゆる「お試し改憲」です。
例えば、大災害時に国会議員の任期や選挙の延期を認める「緊急事態条項」が案として有力です。
しかし、他に「お試し案」として挙げられているものを見ると、その結果は、国益にとって裏目に出るものばかり。
例えば、公明党が提唱する「環境権」が憲法に規定されるようになれば、原発や空港などの社会インフラが批判の的になるかもしれません。
また、おおさか維新の会が関心を示しているのは「地方分権」を軸とする統治機構の改革です。これも、翁長雄志・沖縄県知事が基地移設問題で日本の安全保障を揺るがしているように、危険な発想です。
改憲のための改憲では、意味がないのです。これでは、政治家たちが「戦後初めて自分が改憲した」というステータスが欲しいように疑われても仕方がありません。
9条改正は説得しないと無理
こうした誤魔化しを続けていては、「9条の改正など、夢のまた夢」になってしまうのではないでしょうか。
特に、9条を改正するための最大のネックは、この国の自虐史観です。
「この国は侵略国家だった」「軍を持つと、戦争したくなる国だ」という歴史認識により、日本の多くの国民は、「自分の国は、自分で守る」という当たり前の考えが持てないのです。
安倍首相は昨夏、「安倍談話」を発表し、年末には「日韓合意」を結びました。これは政権の支持率を維持することに一役買った面があるでしょう。しかし結果的に自虐史観を上塗りし、9条改正を遠のかせてしまったのではないでしょうか。
また、「安倍首相が戦争をしたがっている」という声も聞こえてきます。まさか、中国や北朝鮮とわざと小競り合いを起こして、9条改正につなげようなどとは思っていないことを祈りたいものですが……。
誰かが、国民を正面から説得し「なぜ9条改正が必要なのか」を伝えなければいけいけません。
時間はありません。
南シナ海の主権の問題でも、オランダ・ハーグの仲裁裁判所の中国の領有権を否定する判決を、中国は「紙くず」としてはねつけました。「話し合いによる解決」が効かない相手であることは明らかです。
北朝鮮も、ミサイル実験を繰り返し、その技術力を上げています。
アメリカ大統領選において、トランプ氏、クリントン氏のどちらが勝っても、日本の安全保障には自立が求められます。
国防に関する国民的議論を、早急に本格化させる必要があります。幸福実現党はこれからも、正々堂々と、正しい歴史認識や国防の重要性を訴え続けて参ります。