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安倍晋三首相は2017年4月に予定されている消費税10%への増税を、2019年10月まで2年半延期する旨を麻生太郎副総理兼財務相、谷垣禎一自民党幹事長に伝えた。麻生副総理はこれに反発し、「再延期するなら、衆院を解散して同日選で国民の信を問うべきだ」と主張。引き続き協議が行われる。
伊勢志摩サミットで保守系を取り込み、オバマ米大統領の広島訪問で左派系にもアピールできた今は、安倍首相にとって絶好のタイミング。本心では「衆参同日選」をやりたくて仕方がないはずだ。
当初2015年10月に予定されていた10%への消費増税は、「アベノミクスの成功を確かなものとするため国民に信を問う」という分かりにくい理由で行われた衆院の解散・総選挙の結果をもって延期された。同じような理由で解散をするなら、さすがに批判も集まるだろう。
そこでまずは、「リーマンショック並みの経済状況」とアピールして増税延期の理由をつくり、その後、麻生副総理から「同日選で信を問うべき」と語らせて、同日選への布石を敷いているようにも見える。
自民党の"名優"たちによって「茶番劇」を繰り広げ、国民やマスコミの反応を確認して、その反応次第では衆院解散のカードを切る可能性もあるだろう。
だが、10%への増税を延期するといっても増税が中止になったわけではない。
すでに5%から8%への増税を行った安倍内閣としては、もうこれ以上の消費増税は避けたい。
実際、延期期間としてあげた「2年半後」は、安倍首相にとっては、自民党党則で2期6年までと定められている自民党総裁の任期をまっとうした後である。自分が首相であるうちは消費税を上げたくないということだ。
2年半後とはいえ、消費増税の可能性が残されたままでは、国民はサイフの紐を開かず、景気は一向に上向かない。選挙対策のために補助金をばらまく自民党政治のやり方を根本的に変えなければ、こうした不毛な「茶番劇」は続く。
自分たちの失政で巨額の財政赤字を積み上げておきながら、「国民の借金を返すため」と述べたり、破綻確実な賦課方式の年金システムを変えることなく「年金や社会保障が危ない」と国民を脅したりするというのは、不誠実極まりない。
政治は神々のもと、誠実に行うべき「まつりごと」である。自民党の「茶番劇」はそろそろ終わりにしていただきたいものだ。
(小川佳世子)
なお、自民党が巨額の借金を作り上げてきたメカニズムについては、本誌7月号(5月30日発売)の特集で解説しているので、ぜひお読みいただきたい。
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