自由の国・アメリカの大学で、最も学ばれている経済学者が、共産主義の父、社会主義の父と呼ばれるカール・マルクス(1818~83年)だった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル傘下のマーケット・ウォッチが、このほど報じた。

記事によると、ここ10年近くのアメリカの大学のシラバスを100万件以上調査し、大学で使われているテキストを調べたところ、経済学の分野で1位が、マルクスの『共産党宣言』。2位、アダム・スミスの『国富論』、3位、ポール・クルーグマンの『economics』と続く。

格差を批判するピケティがブームに

なぜ、自由の国・アメリカで……と考えてしまう。

だが調べてみると、世界中で話題になり、日本でも社会現象にもなった、フランス人の経済学者、トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』は、アメリカでも注目され、発売半年で50万部のベストセラーになった。

書籍の内容は、簡単に言えば、「資本主義では、金持ちはますます金持ちになって、貧しい人たちとの格差が開く」という資本主義批判。マルクスの「労働者を搾取する資本家から富を奪え」という主張の焼き直しと言える。

アメリカの政治も左傾化している

確かに、オバマ政権誕生後のアメリカは、自助努力の精神を無視して、「金持ちは悪」と見、貧しい人にお金をばらまくことこそ善である、かのような国へと変質している。

「オバマケア」と呼ばれる医療保険の制度改革など、社会保障の充実を目指している。1月下旬に行った一般教書演説でも、オバマ大統領は、富裕層に対する課税強化策を打ち出した。

さらに、今年11月に行われる大統領選挙で、ヒラリー・クリントン氏と民主党の候補者争いをしているバーニー・サンダーズ上院議員は、自ら認める社会主義者。「最低賃金の引き上げ」「格差の撤廃」「金融業界に課税することで、公立大学を無償化する」「大きすぎる銀行の解体」などを訴えている。

こうした「貧しさの平等」を求める空気が、アメリカを「世界の警察官」の役割から退かせているのだろう。

アメリカは中国を抑え込める「力」を

資本主義国であるはずのアメリカがマルクス主義によって弱体化する一方、共産主義国であるはずの中国が資本主義を一部導入したことによって台頭。南シナ海でも、アメリカは中国を抑え込めずにいる。

中国は、無駄な建物を立て続け、嘘の数字で見せかけの経済成長をつくってきた。「崩壊トレンド」に入ったとは言え、一党独裁の中国共産党政権が、一朝一夕に倒れるとは思えない。そのプロセスでは、周辺国への強硬姿勢を示すことで、国内の不満を解消することも十分に考えられる。

その意味でも、アメリカには世界の警察官としの役割に復帰してもらわなければならず、次期大統領には、「強いアメリカ」を取り戻す人物が望まれる。マルクスの亡霊に引きずり下ろされてはならない。(祐)

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