トヨタ自動車は2016年1月、米シリコンバレーに、人工知能に関わる研究と商品企画を行う新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(TRI)を設立する。200人規模の会社で、2020年までに約10億ドル(約1200億円)を投じるという。

トヨタ自動車社長の豊田章男氏は、新会社の設立発表会で「人工知能とビッグデータを自動車以外の産業基盤の要素技術として活用できるのではないか」と述べ、自動車以外の新領域に人工知能を使っていく考えを示した。

「トヨタは新たな企業に生まれ変わる」

この会社の最高経営責任者(CEO)は、ロボットと人工知能研究の第一人者、ギル・プラット氏だ。プラット氏は会見で、「トヨタという枠を超えて、(グループの事業領域以外の)さまざまな応用分野でも社会に貢献したい。ハードウエアで成功したトヨタが、ソフトウエア技術と融合した新たな企業に生まれ変わる」と述べた。

新会社では、当面、完全な自動運転技術や高齢者向けのロボット開発を行うという。自動運転開発については米グーグルやアップル社が先行しているが、プラット氏によると挽回は可能だという(12月21日付日本経済新聞電子版)。

日本や欧米の自動車市場はほぼ飽和状態であり、中国も飽和状態に近づいている。世界のトヨタといえども、自動車に次ぐ中核事業の創出が急務だ。

ロボットがゴミ捨てや料理をしてくれる!?

20年後、日本はどのような産業を生み出せるのだろうか。

例えば人工知能が発達し、10歳程度の知能をもつ家事手伝いロボットが家にやって来ているかもしれない。ゴミ捨てや掃除洗濯、買い物や子供の世話までやってくれ、人間のような心配りができ、家族の一員として溶け込むソフトタッチなロボットだ。これらのロボットが開発されることで、少子高齢化に伴う労働力不足もカバーできる。

また、地上を走る車に加えて、「空を飛ぶ車」が走っている可能性は高いだろう。それも、目的地を登録すると、自動運転で目的地まで運んでくれる車だ。実際、トヨタ自動車の子会社は9月、「空飛ぶ車」の特許をアメリカで出願している。

この実現には、技術開発に加えて、交通法規の整備なども必要だ。富裕層には、高級車代わりに国産のプライベートジェットが普及している可能性もある。

さらに、日本政府が国債などを発行して資金を集め、月や火星に日本の基地をつくることもありうるだろう。

このように、日本の製造業の未来は、実は明るい。ものづくりは日本の得意分野だ。近年はアメリカ企業の活躍が目立っているが、日本もそれに負けない未来の構想を打ち出すことで、産業を興すことは可能だ。トヨタを筆頭に、日本を代表する製造企業は「ものづくり大国・日本」の威信をかけて、「新産業を興そう」と決意を固めるべきだ。(山本泉)

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