中国で27日に開かれた全国人民代表大会において、「反テロ法」が全会一致で可決・成立し、2016年1月1日から施行されることが決まった。

高まる情報統制に懸念の声

「反テロ法」の内容は、国内のIT企業に、暗号キーなどの機密情報を政府に渡すことを義務付けるものだ。

外国企業の中国での事業活動に影響するという見方があり、アメリカ政府も「中国で言論や宗教の自由が制限され、サイバー空間の情報セキュリティーが損なわれる」などと批判している。

同法はまた、人民解放軍が海外の反テロ作戦に乗り出すことを容認したほか、模倣されかねないテロについては詳細な報道を禁じるなど、情報統制の強化に懸念の声が出ている。

習近平は政権権力の拡大にインターネットを使いたい

習近平体制になってから、インターネットの検閲や規制は強化される一方だ。インターネット空間は、政府が掌握できれば政権の宣伝手段として利用でき、掌握できなければ、常に政権に対する脅威となる。それゆえに中国では、習近平政権に都合の悪い内容は瞬く間にネット警察によって削除される。さらに習近平政権の管理に従わない、グーグル、ヤフー、フェイスブック、ツイッター、LINEなどのサーバーは、すべて中国のインターネット市場から排除されている。

ITに中国経済発展の商機を見出す中国

情報統制を強める一方で、中国政府はこのほど、浙江省烏鎮で「インターネット博覧会」を開き、インターネットが中国にもたらす巨大な商機をアピールした。各国からインターネット関連企業など2000人あまりの代表が参加し、レノボ、アリババ、百度(バイドゥ)、騰訊(テンセント)などの中国大手IT企業の代表と交流した。

こうしたイベントを開催しながら、中国警察はIT金融業界に対する全国一斉摘発や情報統制を行うなど、膨大なエネルギーを使って中国のインターネット空間をコントロールしようとしている。アクセルとブレーキを両方同時に踏んでいるかのようだ。

インターネットで崩壊に近づく習近平政権

習近平政権が、インターネット空間で自由に発言できるプラットフォームを恐れていることからも、同政権にとって怖いのは「言論の自由」であることがわかる。技術革新でより多くの中国国民がネットユーザーになるにつれて、習近平政権も検閲や情報統制にますます力を入れていくだろう。

中国政府にとっては、政治は社会主義で経済は市場経済というのが好都合のようだが、事業運営や商品選択の自由が保障されない限り、市場経済は正常に機能することさえできない。こうした矛盾をはらんだ現在の体制は早晩、限界がくることが予想され、各地に点在している民主活動家がインターネットの力でつながれば、大規模な暴動や革命に発展することは避けられない。

中国は、今回の「反テロ法」のような場当たり的な法律整備では、この革命の芽をつぶせないところまで来ているのではないか。(真)

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