自民・公明の両党は9日、軽減税率の対象品目について協議した。それを受けて、2017年4月に消費税を10%に引き上げる際に導入する軽減税率の対象品目について、生鮮食品と加工食品を合わせた食品全般とすることで合意した。

軽減税率では、自民党は生鮮食品などを対象に限定。公明党は加工食品まで拡大するよう要求していた。

両党の協議の結果、肉や野菜などの生鮮食品に加え、ハムやカップ麺、菓子パンや惣菜などの幅広い加工食品が、消費税が10%となっても8%に据え置かれる方向で最終調整に入った。対象品目の線引きをめぐり、両党の間で激しい交渉が続いていたが、自民党が公明党に譲歩した形だ。

軽減税率をめぐる議論では、一見、「国民の負担をいかに軽くするか」が論点であるかのようにも見える。だがよく見れば、自民党と公明党の「政争の具」でしかない。

財閥解体のための相続税

「税金」と聞くと、無前提に公平で公正なもので、絶対的に払うべきもの、と考える人も多いだろう。だがそこには、さまざまな政治的な思惑が潜んでいる。

分かりやすい例を挙げると、現代の日本の税制の基礎をつくったのは、「シャウプ勧告」で有名なGHQが派遣した租税法学者カール・シャウプである。その中で相続税・贈与税が定められたが、目的は財閥などに富が集中することを防ぐためであり、意図的に最高税率を高く設定するよう指示された。

だがその奥には、富を集中して多くの産業の発展に寄与してきた財閥を解体することによって、日本の国力を弱めようという思惑があった。

消費増税先送り解散!?

日本国内の歴史を振り返っても、税制の扱いをめぐって、政党間が争ったり、時には衆議院の総選挙の口実に使われるなどしてきた。例えば、2014年12月は、安倍首相が消費税10%の引き上げ時期を先送りすると宣言して、解散総選挙が行われた。

この選挙に圧勝した安倍政権はその後、さらに15年10月から17年4月に増税を先延ばししたが、ここには8%への引き上げが失敗であったことを隠す目的があったと見られる。

14年4月、8%への増税後、急速に経済が低迷した。4~6月期のGDPは年率換算で7.3%も減少。これは東日本大震災が起きた当時を上回る経済の落ち込みだった。経済政策が間違ったのであれば、増税の「先送り」ではなく、増税の「凍結」や「減税」を見直すべきである。

そもそも、日本の経済の6割を支えているのは国民の消費である。政府は、税金を納める国民側の立場で分かりやすい税制とすべきだろう。そのためには、例えば、税制を一律とするフラット・タックスというアイデアもある。また、国民がお金を使いたくなる「減税」を進め、景気回復・経済成長による税収の拡大が必要だ。間違っても、税制を政争の具にしてはいけない。(HS政経塾 油井哲史)

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2015年9月10日付本欄 国民の負担を減らすには「軽減税率」「還付制度」ではなく「5%への減税」が必要

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2015年4月1日付本欄 消費増税17年4月に10%引き上げ確定 軽減税率との痛すぎるダブルパンチ

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2014年12月10日付本欄 2分でわかる、「軽減税率」って何? いいこと?【衆院選】

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