3月31日の参院本会議で、2015年の10月に予定していた消費税率10%への引き上げを1年半延期し、17年4月とすることが確定した。「景気条項」が削除されたため、景気が悪化しても、増税を先送りできなくなる。

2014年4月に消費税が8%に引き上げられてから1年が経過したが、いまだに家計は増税の影響から抜け出せず、個人消費は伸び悩んでいる。内閣府が発表した報告書「日本経済2014‐2015」によると、8%への増税の影響で、同年4月から9月までの半年間で個人消費が1兆円弱押し下げられたという。増税により消費者がモノを買い控え、景気低迷とデフレから抜け出せないことは、経験則上あきらかだ。

自民党は消費税を10%に引き上げると同時に、低所得者が増税で受ける影響を軽くするために、生活必需品などの消費税率を低くする「軽減税率」の導入も検討している。

しかし、軽減税率の導入は莫大なコストがかかる上に、贅沢品と生活必需品の線引きが難しく、混乱を招くことが予想される。

何より、この軽減税率によって国家権力の利権が拡大する恐れがある。財務省の官僚たちが、ある製品を「生活必需品」と認定して、軽減税率の対象にする代わりに、退職後の官僚が企業幹部として再就職する「天下り」先を確保することもできる。こうなると、財務省がその権限を自らの利益のために利用できるようになるのだ。

新聞やテレビなどのマスメディアは、8%の消費増税が確定する前から「増税確定」の報道を繰り返し、「増税やむなし」というムードを作り上げてきた。マスメディアは、かねてより財務官僚の天下りの受け入れと、軽減税率の適用を交換取引していたように見える。

実際に読売新聞は2010年末に、同年7月まで財務省事務次官の座にあった丹呉泰健氏を社外監査役として受け入れた。この人事の背景には「新聞を軽減税率の対象に」という読売側の要求を通す狙いがありそうだ。2012年10月18日付読売新聞の社説では「消費税と新聞 軽減税率の議論を再開したい」と題して「新聞は民主主義を支える基盤なので、税率を低く抑えるべき」との見解を掲載し、相次ぐ批判を受けた。

マスメディアには、権力濫用を監視し、防ぐ役割があるはずだ。官僚が権力を握ることを助長させるのであれば、使命を果たしているとは言えない。そしてメディア情報の受け手である国民も、鵜呑みにせずその意図を読み取り、何が正しいのかを見極める視点を持つ必要がある。(真)

【関連記事】

2015年5月号記事 10年先の自分を創る「情報選択」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9380

2014年12月10日付本欄 2分でわかる、「軽減税率」って何? いいこと?【衆院選】

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8881

2014年11月22日付本欄 【衆院選】そもそも解説:消費増税してはいけない理由 第1回

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8795