今年の9月、オーストラリアの首相にターンブル氏が就任してから、中国の手がオーストラリアに急速に伸びている。

同氏は国内から、「中国寄り」と懸念されている。親族に中国共産党の元幹部がいると指摘されるほか、国内の情報インフラであるブロードバンド網構築に、中国企業を参入させようとするなどしている。

中国は日豪安保協力を阻みたい

オーストラリア政府が進める、日本・ドイツ・フランスが名乗りを上げるオーストラリアの潜水艦の共同開発計画においても、新首相の「中国への配慮」がちらつく。

ドイツ・フランスの企業は、潜水艦のオーストラリアでの現地生産が可能としていたが、世界最大級の潜水艦をつくる技術を持つ日本は、機密を保護するため、現地生産には消極的だった。

それに対してターンブル政権は、現地生産が望ましいという意向を示す。そのため今のところ、ドイツ・フランスが優勢だ。

もしオーストラリアが日本から潜水艦を調達すれば、南シナ海を日本とオーストラリアで挟み込む形で、海上警備を強化できる。

ターンブル首相が、「日本と共同開発することで、中国包囲網の一端を担うわけにはいかない」と配慮している可能性も否定できない。

同計画の最終提案は、オーストラリア政府に11月末に提出される。果たして、オーストラリア政府は日本案を採用できるのか。

オーストラリアの軍港を中国企業が管理!?

さらに、オーストラリア北部のノーザンテリトリー政府は10月、中国企業の嵐橋グループに約5億豪ドル(約440億円)でダーウィン港を99年間リースする契約に調印。中国の豊富な資金力を活用し、港湾施設を近代化する狙いがある。

しかし、ダーウィン港には軍事拠点がある。毎年100隻以上のアメリカや友好国の軍艦が、オーストラリア軍との合同訓練などのために使用している。ここを中国が管理することになったらどうなるか……。アメリカ海兵隊やオーストラリア軍からは深刻な警戒の声が上がっている。

シンクタンクであるオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)によると、嵐橋グループは中国共産党と関係が深い。2014年8月には嵐橋集団の内部に人民解放軍の支援を得た「人民武装民兵部隊」が設立されている。こうした情報を受け、ASPIは政府に政策の再検討を求めている。

中国が推し進める「海のシルクロード」の拠点の一つに、ダーウィン港が組み込まれる可能性が高くなっている。

日米豪で中国包囲網を強化すべき

このように中国は、オーストラリアを味方につけて、南シナ海から西大西洋まで勢力を拡大することをもくろんでいる可能性が高い。

退陣したアボット前大統領の時代には、日米豪で安全保障関係を強化し、中国を牽制していた。しかし、オーストラリアが親中のターンブル政権になった今、今後も日豪の安保協力は阻まれる可能性がある。

日本の対豪戦略を見直し、日米豪が協力して南シナ海と太平洋の平和を守る体制の強化が必要だ。(真)

【関連記事】

2015年6月1日付本欄中国、南沙諸島の埋め立て「軍事利用」 対中国で日本とマレーシア、じわり接近

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9712

2015年5月22日付本欄 アジア向けインフラ整備に13兆円 日本こそアジア投資を主導すべき

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9679

2015年9月10日付本欄 オーストラリアが日本から潜水艦購入を検討 防衛産業の発展と中国封じ込めを進めよ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8401