植松 努
プロフィール
(うえまつ・つとむ)植松電機専務取締役。小型ロケットやその発射設備、人工衛星などを自社で製作する。北海道の大学・企業との協力で製作した初の人工衛星「HIT-SAT」が、2006年に打ち上げられた。昨年7月にTEDx Sapporoで行ったスピーチ「思うは招く」は、YouTubeで100万回以上の再生回数を記録。著書に最新刊『好奇心を"天職"に変える空想教室』(サンクチュアリ出版)など。
TBSテレビで放映中の連続ドラマ『下町ロケット』が、4週連続で視聴率15%超えを記録するなど好調だ。主人公は、小型エンジンの製造を主力とする「下町の工場」の社長・佃航平。宇宙開発にかける佃の強い思いや技術者魂が周囲を感化していく。その様子に心打たれる視聴者が多いようだ。
そんな佃に負けない情熱を持った人物が北海道にいる。ロケット、人工衛星を自前でつくり、打ち上げ、NASAやJAXAも実験装置を使いに訪れる「町工場」の専務・植松努氏だ。ドラマ『下町ロケット』と、境遇があまりにも似ており、「もしや、モデル……?」とも囁かれている。
全国の書店で発売中の、月刊「ザ・リバティ」12月号の特集「日本のスゴイ技術」に収録しきれなかった植松氏のインタビューを、2回にわたってお届けする。今回の後編では、子供の可能性を摘む「教育」「夢」について話を聞いた。
「どうせ無理」は知らない間に「誰かに教わった言葉」
――今、自分に自信が持てずに、「どうせ無理」と思い、チャレンジする前から夢をあきらめてしまう若者も増えています。
植松努氏(以下、植): でも、誰もが小さい頃はそうではなかったはずです。「どうせ無理」という言葉は、知らない間に「誰かに教わった言葉」なんです。
今、僕はロケット教室を開き、小中学生たちにロケットづくりを体験してもらっています。子供たちを見ると、小学生は、こちらが何も教えたり指示したりしなくても、他の人が作っている様子を真似し、勝手に工夫しています。
でも、中学生になると、途中で「分かりません」と言い、手が止まってしまいます。
こちらが「隣の子を見てやってみたらいいのに」と言っても、すぐに「教えてください」となるんです。こういう子たちは、過去に失敗して、「努力しても無駄」と言われた人たちが多い。これ以上失敗したくないから、失敗する前にチャレンジするのをやめてしまうんです。
僕はこうなってしまった大きな原因は教育にあると思います。「努力しても無駄だ」という思考はとても恐ろしいですが、実は皆、受験で同じような経験をしているんです。
進路相談などで、先生方の多くは普段、「可能性があるから一生懸命勉強しなさい」と言うのに、いざ受験前になると、「そこは高望みだから、無理せずにこの辺を受けなさい」と、否定的になります。
「先生の言うとおりに受験したら落ちてしまった」とクレームを受け、先生方の責任が問われることが増えて、冒険的な進路指導ができなくなっているんでしょう。
こうした教育を続けていけば、子供たちの可能性の芽を摘むことにつながります。
「夢は何個あってもいいんだよ」
――ロケット教室や宇宙開発を通じて、今後力を入れていきたいことは何でしょうか。
植: ロケット教室を通じて、「どうせ無理」という言葉に負けず、夢に向かって努力できる子供たちになってもらいたいです。
以前、静岡に出張に行った時に、小学生の頃に僕のロケット教室に通っていたという女子学生と偶然会いました。その子は大学生になっても、ロケットの勉強を続けていてくれたんです。
一方で、好きな剣道もずっと続けていたらしいんですが、ある時、怪我が原因で剣道を続けることができなくなり、絶望したと話していました。
その時、彼女は、僕がロケット教室で伝えた「夢は何個あってもいいんだよ」という言葉を覚えていてくれて、今は、その他に好きだった英語を勉強しているそうです。
それを聞いた時、僕は「外国人には日本の武道が好きな人が多いから、英語の勉強を頑張って、英語で剣道を教えてみれば。試合はできなくても、教えることはできるよ」とアドバイスしました。すると、彼女は感動して泣き出してね。
彼女のように「どうせ無理」に負けないで頑張ってくれる人がいてくれて、本当に嬉しかったです。もっと彼女のような人を増やしていきたいですね。
今後、僕も、宇宙開発関係で雇用を生み出せるようにしたい。そして、宇宙開発を通じて、問題解決能力を身につける学校をつくりたいと考えています。夢を一つでも多く実現させるために、挑戦し続けます。(了)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『ロケット博士・糸川英夫の独創的「未来科学発想法」』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1275
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