ロイター通信がこのほど、中国が全世界で密かに繰り広げている言論戦に関する「暴露記事」を掲載した。中国政府が秘密裏に、全世界33カ所のラジオ局を使い、中国政府に好意的な報道を流し、印象操作を行っているというのだ。

たとえば、アメリカの首都ワシントンDC全域で放送しているWCRWというラジオ局がある。しかし、このラジオ局を所有し、報道内容を決めているのが中国政府、という事実はあまり知られていない。WCRWが流す放送は、中国のプロパガンダ(政治的な宣伝)なのだ。

具体事例を挙げると、中国が南シナ海で進める人工島の建設に対して、世界中から非難が集中した8月、WCRWは「外部勢力がこの海域に不法介入しようとしている」などという趣旨の報道をした。

「香港のデモは民衆の支持を得ず、失敗に終わった」

また、サイバー攻撃で米政府職員の個人情報が漏洩した際には、米政府が中国の関与を疑っていることを省いてニュースを報じている。香港で民主化を求める学生たちがデモを行ったときも、「なぜデモが行われているのか」を報じず、「民衆の支持を得なかったデモは失敗に終わった」などと報じたのだ。

ロイターの調査によると、同じようなラジオ局が世界14カ国に33局あるという。これらのラジオ局は、地元のフロント企業を通して、中国国営企業の「China Radio International(CRI)」が筆頭株主となっている。

ロイターの報道を受け、米司法省と連邦通信委員会(FCC)は調査を開始。アメリカの法律によると、海外の政府、個人、そして企業は、米国内のラジオ局の株の20%以上を所有してはいけないことになっている。しかし、CRIはフロント企業を通してWCRWの60%を所有しているという。

国際社会に向けて日本の立場を説明することが大切

これは中国の情報戦・言論戦の一環だ。ラジオ局の所有者を隠している事実は、知られたくないことがあるという証拠だろう。

これに対して、日本はこれまで、海外に向けて情報や意見を発信することに力を入れてこなかった。しかし、中国が明確な侵略の意図を持ってアジア地域に進出している今、国際社会に向けて日本の立場を説明・説得することは大切だ。

日本の伝統が「沈黙は金」でも、国際社会での「沈黙」は、相手の主張を認めたことになる。積極的なアナウンスが急務だ。(中)

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