幸福実現党総務会長兼出版局長
矢内筆勝
プロフィール
(やない・ひっしょう)朝日新聞を退社後、幸福の科学に入局。主に広報部門を担当した後、月刊「ザ・リバティ」編集部を経て、広報局長、常務理事等を歴任。NPO(非営利組織)「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」会長に就任し、いじめ相談の傍らいじめ問題解決に向けて、全国でシンポジウムを開催。主な著書に、「いじめは犯罪!絶対に許さない」(お茶の水学術事業会)がある。その他、「朝日新聞の偏向報道から子供の未来を守る!会」「中国の脅威から子供の未来を守る会」を設立、会長。 公式サイト http://yanai-hissho.hr-party.jp/
中国の軍事パレードは、これまで、中国共産党が1949年に中華人民共和国を建国した10月1日(国慶節)を記念して行うのが通例でした。しかし、今年、習近平国家主席はあえて、9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に合わせて行いました。
その狙いや背景を探るべく、幸福実現党・国防部会の会長である私・矢内とメンバーの横井基至さんの二人は、9月2日から8日の日程で、パレードが行われた北京市内と南京の「南京大虐殺記念館」、株暴落で揺れる上海を視察してきました。
現地で私たちが見た、中国共産党による「反日」の実情と、「中国の今」の一端を、全5回に分けて報告します。4回目の今回は、中国経済の象徴である上海の街から読み取れる中国経済の現状について。
中国経済を象徴する経済都市・上海
視察の最後に、私たちは上海に向かいました。南京と上海の距離は約300km。1937年に松井石根大将率いる日本軍が、南京攻略のために上海から南京城まで3日かけて進軍しましたが、今では日本の新幹線にそっくりの"高速鉄道"に乗って僅か2時間です。
上海は、中国最大の経済都市です。中心部には長江(揚子江)が流れ、その西側にはかつての列強諸国の租界地の面影を残す西洋建築のビルディングが並び、対岸には、近代的な高層建築の摩天楼群が広がります。その景観はまさに、中国の経済成長の象徴です。
しかしその中国経済が今、崩壊の兆しを見せています。今年7月に上海株式市場が大暴落し、その後も断続的な乱高下と暴落を繰り返し、市場の混乱は世界経済に深刻な悪影響を及ぼしています。
大学生の半数が株式売買
私たちは、市内の証券会社を訪れました。そこに足を踏み入れると、その深刻さが伝わってきました。
証券会社の株価ボードコーナーの前は、弁当などの食事を持参した60代や70代の高齢者が占拠し、食い入るように表示される株価に見入っています。その横に設置されたパソコンで、70代くらいの女性が必死の表情でキーボードを叩いています。
私たちが会話すると、株価に関する情報を話していると思ったのでしょう、何人もの老人たちが近づいてきて、聞き耳を立てます。そうした不穏な雰囲気を察知した守衛が駆け付け、私たちは追い出されるようにビルを出ました。
上海の大学生で通訳の李さん(仮名)は、こう話してくれました。「証券会社に行くのは老人たちだけで、普通の市民は皆、スマホや自宅のパソコンで株の売買をします。大学では学生の半数が株の売買をしており、私も一時期やっていましたが、勉強が手に付かなくなったのでやめました。暴落の前だったので、よかったです。でも、破産して自暴自棄になった市民が何人もビルから飛び降りて自殺しています」。
今回の大暴落で、時価総額にして約4兆ドル(約480兆円)が消えたと言われています。中国の株式売買の8割を個人投資家が占めており、その数は約9000万人、実に日本の人口に届かんとする数の人たちが株取引をしていることになります。
下り坂の中国経済
すでに中国では土地バブルの崩壊が進んでおり、今回の株暴落(株バブルの崩壊)によって、中国経済は今後、坂道を転げ落ちるように崩壊に向かう可能性は極めて高いでしょう。
例えば、中国の経済状況を知るための指標とされる「電力消費量」は、2015年の上半期で前年同期比の僅か1.3%増であり、同じく「鉄道貨物輸送量」は同期比でマイナス10.1%減となっています。さらに同年1月~7月の貿易統計によれば、輸入が前年同期比で実に14.6%減、輸出も0.8%減で、輸出入を合わせた貿易額が7.2%も減少しており、中国の実体経済は極めて深刻な状況にあることは間違いありません(石平、黄文雄 著『これから始まる中国の本当の悪夢』徳間書店)。
しかも、中国を視察して感じるのは、中国の経済成長は実は外国商品の「コピー」で成り立ってきたということです。私たちが乗った“高速鉄道"も、電化製品も、自動車も、地下鉄も、遊園地のキャラクターも、さらに兵器に至るまで、その大部分は外国企業の技術移転か不正コピー、すなわち盗用によるものです。
しかも現在、ほとんどの中国企業は、自分たちで技術を蓄積し、研究費を出し、新しい商品や製品を開発するという経験も、発想もありません。
従来の経済が破壊され、外国企業の資本や技術が入って来なくなった時、中国が自力で経済を再生させるのは不可能――それが、現地を視察した私の実感です
いずれにしても、中国経済のシンボルである上海株式市場の大暴落が、「経済大国・中国」のメッキをはがし、その崩壊の兆しを世界に知らしめたことは、なんとも皮肉です。
東京以上に華々しい摩天楼を擁する上海も、かつて世界から殺到した外国企業のビジネスマンたちは急速に姿を消し、観光客もめっきり減少しています。
市内の繁華街の一つである南京東路を歩いても、欧米からの観光客の姿はまばらで、ネオンで彩られた派手な街並みとは裏腹に、まったく客のいないレストランや飲食店ばかりが目につきました――。その対照的な風景が、今も脳裏から離れません。
(第5回へ続く)
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