安全保障関連法案をめぐり、元最高裁判所長官の山口繁氏がこのほど、「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反と言わざるを得ない」「従来の解釈が国民に支持され、9条の意味内容に含まれると意識されてきた。その事実は非常に重い」などと述べた。
「憲法の番人」と言われる最高裁の元トップが、「違憲」発言をしたのは初めて。これについて、共同通信は「高村正彦自民党副総裁は、憲法学者から法案が違憲と指摘され『憲法の番人であり憲法学者ではない』と強調したが、その元トップが違憲と明言したことは、波紋を広げそうだ」と報道。東京新聞は、「すでに退官したとはいえ『憲法の番人』だった最高裁元長官の指摘は重い。安倍政権は廃案を決断すべきだ」(5日付社説)と主張した。
山口氏の発言は、「私人」としての立場に過ぎないのに、マスコミは、あたかも「公人」が発言したものであるかのように紹介。そうしたマスコミの報道姿勢に問題があるが、一方で、法曹界の問題点も指摘されている。
例えば2008年、航空自衛隊がイラク戦争後に同地に派遣されたことに関し、市民が国を提訴したことがあった。この訴えは結局、棄却されたが、当時、名古屋高裁に勤務していた青山邦夫裁判長は、個人の意見(傍論)として、「武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、憲法9条に違反する活動を含んでいる」とした。傍論には法的拘束力はないものの、左翼系は「自衛隊のイラク派遣は違憲」と主張する根拠に使っている。
さらに不可解なことに、青山氏は判決を下した直後、定年を2カ月残した状態で突然退官し、現在は、名城大学の教授を務めている。高度に政治的な問題についていかなる判決をくだそうとも、その後退官してしまえば何ら責任を問われることはない。
だが、他国の法律を学んでいる最高裁長官や憲法学者であれば、憲法9条が国際的常識から逸脱した条項であり、現実主義に則すべき国防の現状を無視したものであるか、よく理解しているはずだ。
法律を生業にしている人がなすべきは、違憲や護憲の主張ではない。国民の幸福に資するという憲法・法律の本来の趣旨に立ち返ることである。(山本慧)
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