2016年11月に大統領選を控えているアメリカでは、いよいよ共和・民主両党の候補者選びが本格化している。オハイオ州では、6日夜(日本時間7日朝)、共和党の大統領候補者による初めての討論会が開かれた。

共和党からは17人が立候補しており、この中から2016年半ばに、正式な候補者1人が選ばれる仕組み。民主党も同様だ。今回、フォックス・ニュースの討論会に参加したのは、世論調査でトップ10入りした共和党候補者。他の7人は数時間前に、別の討論会に参加した。

世論調査のトップに躍り出たダークホース

もっとも注目を浴びているのは、やはり、実業家やテレビ番組の司会者として有名なドナルド・トランプ氏だ。その派手な性格や際どい発言のためか、共和党の最有力候補と思われていたジェブ・ブッシュ氏(元ブッシュ大統領の弟)に10ポイント以上の差をつけて、世論調査の首位に躍り出ている。

ただ、トランプ氏の人気は共和党のごく一部に限られており、広い意味で大衆受けしないというのが米メディアの大方の予想だ。一部には、彼が移民蔑視・女性蔑視の思想を持っているのではないかという指摘もある。

共和党の各候補者の主張の違い

討論会で共和党の各候補者たちは、「政府が大きくなりすぎている」「国防力の増強」「不法移民は問題である」など、大まかなところでは一致している。しかし、具体的な話になると、違いが見え始める。

違法移民について以前から言及してきたトランプ氏は「アメリカとメキシコの間に壁をつくるべきだ」と発言し、厳しい姿勢を見せた。一方、ブッシュ氏は「彼らが合法な移民になれるようにする、包括的な解決策が必要だ」と、違法移民の境遇に対して一定の理解を示した。

また、米国家安全保障局(NSA)が米国民を盗聴していることについて、ランド・ポール上院議員が「アメリカ人ではなく、テロリストを盗聴すべきだ」と、国民のプライバシーが侵害されていることに懸念を示した。しかし、「盗聴する前に両者を識別する術はない」と主張するニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏との間で、激しい論争が展開された。

さらに、社会保障制度や医療保険制度が国の財政を圧迫していることに対して、クリスティ氏は両制度の削減を示唆する発言。現在、税金を払っていない人に課税することで収入源を確保すべきだと主張したアーカンソー州知事のマイク・ハッカビー氏と対立した。

アメリカ国民は「正しい選択」ができるか

米メディアの間では、共和党と民主党の候補者数に言及するところも多い。

例えば、共和党の17人の候補者の中に明らかなリーダーがいないことは、「人材やアイデアが豊富」なのか、「指導力が欠けている」のか、という指摘が見られる。

翻って、民主党側では、ヒラリー・クリントン氏やジョー・バイデン副大統領(※正式な立候補はまだしていない)以外には、強い候補者が見当たらない。これについても、「人材やアイデアが欠乏」しているのか、「党が一枚岩」なのか、で意見が分かれている。

「小さな政府」や「国防強化」を支持する共和党と、「大きな政府」や「社会保障の充実」を目指す民主党だが、アメリカでは思想の二極化が騒がれて久しい。

アメリカ国内では、国力と影響力が急速に失われていることに危機感を持っている人々も増えているといい、共和党の候補者たちは、その危機感を背景に、それぞれの施策を打ち出している。

大統領選挙は来年の11月。それまでに繰り返される討論を通じて、アメリカは「正しい選択肢」を見つけることができるのだろうか。(中)

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