米大統領選について、ホテルやカジノ経営で成功し、「不動産王」として知られるドナルド・トランプ氏がこのほど、共和党から立候補する意向を明かした。これで共和党の大統領選候補者は12人となった。ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事やウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事マルコ・ルビオ上院議員らが立候補するも、支持率はほぼ横並びで、目玉不在の争いが続く。

トランプ氏は、その過激な発言で党内からも批判が集まっている。例えば、メキシコなどからの不法移民排斥の発言を繰り返し、メキシコとの国境には「万里の長城を築く」と発言。また、「日本はアメリカに何百万台もの車を送ってくるが、東京でシボレー(アメリカ製の自動車)を見たことはあるか?」として、日本やメキシコなどに奪われた自動車産業の雇用をアメリカに取り戻すと訴えた。

最新の各社の世論調査では、トランプ氏の支持率は10位前後にとどまっている。トランプ氏の主張の過激さが反発の要因になっていることは伺える。

だが、トランプ氏の出馬会見は、「お金持ちが政治をやるとどうなるか」ということの考察に役立つだろう。トランプ氏は会見で、純資産額が約1兆円あると公開。「選挙運動資金は自力でまかなえるので、特定の利益団体に左右されることなく自由な活動ができる」とも発言しているのだ。

確かに、経済的自由が政治的自由をもたらすことは否定出来ない。自ら築いた資金があれば、利益団体やスポンサーの顔色を伺うことなく、自由に発言できるからだ。日本でも、国会議員の資産が発表されると、資産額が少ない政治家が「庶民的」として評価されるという風潮があるが、資産を築いた人を皆、悪人のように扱うのは踏みとどまったほうが良いかもしれない。

また、実業家として事業を起こして成功し、新たな雇用を創出できる人材が政治家になれば、新産業を創出して経済成長を起こし、国を発展させるという発想に基づいて政治が行われる。国民に重税を課し、バラマキ政策で人気を取るのとは全く違う発想で、国家が運営されるだろう。

もちろん、大富豪が全員、政治家に適しているというわけではない。ただ、経済的に自立した人材が政治の世界に参入し、しがらみから自由になって正論を述べ、改革を促すことができるならば、それは一定の評価を受けてもよいのではないだろうか。マスコミは成功者を叩いて人々の嫉妬を煽りがちではあるが、むしろ、成功者だからこそできる社会への貢献こそを正しく評価するべきだろう。(晴)

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