ケインズ経済学 vs サプライサイド経済学:不況下に復活するケインズの亡霊

ケインズ経済学 vs サプライサイド経済学:不況下に復活するケインズの亡霊

 

《本記事のポイント》

  • 給与税の減免措置を含まない景気刺激策は「景気を刺激しない」
  • 働く人のやる気をそぐケインズの有効需要理論
  • ケインズ政策は、政治家のバラマキを正当化してきた

 

 

コロナ不況下にあるアメリカで、景気刺激策の協議が大詰めを迎えている。金曜日に週600ドルの失業給付金の期限が切れるためだ。

 

米政府はこれまで約3兆ドル規模の対策を講じてきたが、民主党はさらに3兆ドルの財政出動と、週600ドルの失業給付金を年末まで延長したいとしている。一方、共和党は計1兆ドルの景気対策をまとめる方針で、目玉となるのは一人当たり1200ドルの給付金、失業前の賃金の7割を補償する経済対策である(トランプ氏は1200ドル以上になるかもしれないと答えているため、増額される可能性もある)。

 

4月~6月期の実質国内総生産は年率換算で前期比マイナス32.9%となる中、米政府は景気対策に必死になるあまり、右も左も現金給付の支給に頼り始めた観がある。

 

しかも、もともと予定されていた「給与税の減免措置」は現在のところ、次の景気刺激策には含まれない予定だという。

 

給与税の減免措置とは、社会保険料など給与から源泉徴収される費用を雇用者および被雇用者から12月末まで免除するもので、政府収入の3分の1にあたる収入を失ってでも、雇用者に従業員を雇いつづけるインセンティブを与える政策だ。要するに、政府が身を削ってでも、雇用の維持を目指す政策である。だが失業中の人にとって直接的なメリットがないため、民主党から批判の対象になっていた。

 

 

減税政策を含まない景気刺激策は「景気を刺激しない」

給与税の減免措置は、今後の景気刺激策に含まれる可能性はまだ残されている。ラリー・クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、米テレビ番組でこう述べた。

 

「長期的な成長のためには、減税措置と規制緩和を導入し、投資のインセンティブを高めなければなりません。給付金も不可欠ですが、長期的な繁栄のために、政府支出を続けることはできません。私たちは民主党ではありません。

 

ルーズベルト政権の財務長官だったモーゲンソー氏は、1939年は下院でこう証言をしています。『政府は8年間財政支出を続けてきましたが、状況を改善できませんでした』。これが今、私たちが学ばなければならない歴史の教訓です」

 

またフォーブス誌の社長スティーブ・フォーブス氏は、給与税の減免措置が盛り込まれなかったことについて、米テレビ番組でこう批判した。

 

「議員はインセンティブについて理解していません。給与税を減免すれば従業員の手取りが増えますし、雇用者側も費用が減って雇用を維持するインセンティブが高まります。どちらにとっても得な経済政策なのですが、ムニューシン財務長官はこの点を理解していないようです」

 

さらにスティーブン ・ ムーア氏も米テレビ番組でこう主張した。

 

「減税措置がない景気刺激策で、どう経済を成長させるつもりなのでしょうか。しかしワシントンではトランプ大統領は給与税の減免に大きな関心を持っています。給付金や失業補償は仕事に戻るインセンティブになりません。

 

民主党のナンシー・ペロシ氏は10年前、オバマ政権下での給与税の減免措置について、労働者のためになると賛同していました。なぜオバマ氏の時には賛同し、トランプ氏の時に、反対するのでしょうか。ムニューシン氏は1200ドル配る方が即効性があると思っているようですが、減免すれば7%も給与が上がるのです。そのことが分からないようですね」

 

 

生産者サイドのやる気をそぐケインズの有効需要理論

減税で政府が身を削るよりも、国民にばら撒いて政治家が「いい顔」をする政策が失業者対策として受け入れられているのは、20世紀に失業対策のための経済政策を構築したケインズの有効需要理論がいまもって受け入れられているからである。

 

政府支出の増大を招く政策の問題について、トランプ大統領の経済顧問であるアーサー ・ ラッファー博士は、弊誌のインタビューでこう答えてくれた。

 

「政府がお金を給付すると、国民はそのお金の一部を使う。それが仕事を生み出す。つまり政府支出が増えると、雪だるま式に効果を生むという主張があります。でも政府が財政支出のために使うお金は、もともと国民から取ってきたお金です。政府に課税されなければ、国民がそのお金を使うことで、何らかの経済効果がもたらされたはずです。その分を差し引くと、財政支出の効果は打ち消されます。専門用語を使うと、『所得効果』はゼロになる、と表現できます」

 

要するに政府支出を正当化するケインズの有効需要理論は、政府支出を受け取る受領者側ばかりを見て、政府支出を賄う国民の側を無視しているのだ。

 

さらにラッファー博士は、こうも述べる。「もし働いている人が対価を何も受け取ることができず、働いていない人があらゆるものを手にすることができたら、この国の生産はゼロになります」

 

もっと分かりやすくいえば、こうなる。あなたが仕事から疲れて寮に帰宅するとしよう。失業給付金に頼って生きている寮の友人は、ネットフリックスで映画を楽しんでいる。

 

あなたは上司の厳しい指導に耐えつつ、仕事で成果を上げるようと努力する。だが友人はコロナを恐れるあまり自宅に籠りきりだ。そんな彼の生活を尻目に、毎朝出勤しなければならないとしたら、あなたはどんな気持ちになるだろう。

 

給付金は、世の中に付加価値を加えようと仕事に従事する勤勉な生産者側に、着実に影を落としてしまうのだ。このような不公平な政策を続ければ、給付金を貰う方が得だと思う人が増えても仕方がない。

 

 

ケインズ政策は深刻な副作用を招いてきた

だが実際は、クドロー氏が引用したモーゲンソー氏の悲痛な証言にあるように、大恐慌時にケインズ政策は際立った効果を上げられず、失業率は高止まりした。しかも、その副作用はすっかり見落とされている。

 

何十年もケインズ政策を行った結果、日本を含め先進国で、赤字国債が増発され、政府債務は膨らんだ。また70年代には、景気が後退する中でインフレが上昇するというスタグフレーションを招いている。

 

さらに悪いことに、ケインズ経済学は政治権力と結託して「バラマキ」を正当化した。時の権力者にとって、赤字国債を発行してでも、ばら撒けば組織票を固めるのに都合がよかっただけでなく、「政府からどれだけばら撒いてもらえるか」と考える、お上頼みの国民をつくってしまうきっかけとなった。

 

これほど深刻な副作用を招いた経済理論はなかっただろう。

 

それとは異なり、サプライサイド経済学の根本には、国民がその創造性を発揮して、ものづくりやサービスの付加価値を上げて実体経済を強くする思想がある。

 

しかし「小さい政府を目指す政治家」と、「お上頼みではない国民」との"幸福な組み合わせ″がなければ実現が難しい。つまり「自由」を正しく解する政治家と、自助努力を美徳と考える良識ある国民のもとで、初めて実現する政策だ。

 

二期目を目指す米大統領は、大統領選での勝利を目指し、国民に迎合的になりやすい。だが幸いなことにトランプ氏は政治家の権力の拡大を目指す政治家ではなく、国民の主権を取り戻すために当選した大統領だ。トランプ氏には、歴史でほぼ失敗が証明された経済理論ではなく、その信念を貫いてほしい。

(長華子)

 

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