治安当局の催涙弾から逃げるデモ参加者たち。

《本記事のポイント》

  • 香港の取り締まりを強化する「国家安全維持法」が成立
  • 民主活動家は「国際社会が最後の自由を守ってくれることを望む」と訴える
  • 日本の政財界が「親中国的な遺伝子」を取り除くタイミングが来ている

香港が中国にのみ込まれていく──。

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の常務委員会は6月30日、香港での反体制活動の取り締まりを強化する「香港国家安全維持法(以下、国家安全法)」を全会一致で可決・成立した。

各メディアによると、同法の下では、過去の行為にさかのぼって起訴される可能性もあり、最も重い量刑は終身刑。2047年までの50年間、外交と防衛を除く分野で、香港の高度な自治を守る約束だった「一国二制度」は、事実上、無効化される。

アグネス・チョウ氏らの政治団体が解散

国家安全法は、(1)国家の分裂、(2)中央政府の転覆、(3)テロ活動、(4)外国勢力との結託・海外勢力による危害、という4つの行為を禁じ、刑罰の対象とするもの。

中国の中央政府の出先機関として香港に設置される「国家安全維持公署」が、香港政府を監督・指揮する。行政長官が裁判官を指名して、事件の処理に当たらせるため、司法の独立が脅かされることも懸念されている。

成立した6月30日、民主活動家で政治団体「デモシスト」の中心的な人物だった、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)氏らは、自身や他のメンバーに累が及ぶことを危惧してか、同団体からの脱退を表明。

黄氏はSNSで、「私たちの声がすぐに届かない場合は、国際社会が香港のために声をあげて、最後の自由を守ってくれることを望みます」と悲そうな訴えをつづった。

その後、主要な人物を失ったデモシスト自体も解散を表明した。

コロナ禍がなければ、習近平氏は天皇陛下と会見していた

国家安全法の可決を受け、安倍政権の菅義偉官房長官や茂木敏充外相は「遺憾」の意を表わした。

だが、昨年6月から香港で本格化した、逃亡犯条例改正に反対する大規模なデモに対し、安倍政権は静観を決め込み、習近平・中国国家主席の国賓来日を実現させようとしていた事実を、忘れてはならない。

その後コロナ・パンデミックの影響もあって国賓来日は白紙になったが、コロナ禍が起きなければ、安倍政権は今春までに習氏を歓待し、天皇陛下と会見させるなどして、「中国との蜜月関係」を国内外に広くアピールしていたはずだ。

想像するだけでも背筋が寒くなる。

昨秋時点で、邦人保護のための「自衛隊派遣」などを提言していた

本欄では、香港の人々が自由を求めて行うデモに対し、治安当局が取り締まりを強化して死傷者が出ていた昨年9月、以下のような提言を行った。

日本は邦人保護のための「自衛隊派遣」を表明し、米英と連携すべき【香港革命成就への道(1)】

イギリスは香港を救え! 返還時の中英の約束を、中国は一方的に破った【香港革命成就への道(2)】

香港の民主化運動が「正しい革命」と言えるワケ【香港革命成就への道(3)】

また、デモが行われていた香港に飛んで取材を行い、現地の人々の訴えを聞いた。

・泣きながら取材した香港デモ~日本人へのSOS~Japanese journalist reports Hong Kong in tears (with English subtitle)【未来編集】

香港を舞台にした、米中の覇権戦争が始まっている

国家安全法の危険性が叫ばれていた今年6月上旬、大川隆法・幸福の科学総裁は「時事政談」を行った。

この中で、香港問題について、大川総裁は「 これはもう明らかに、実戦の戦いの前の、 (アメリカと中国の) 覇権戦争でしょう 」と指摘。香港を舞台に、民主主義のアメリカと、全体主義の中国のつばぜり合いが行われている、というものだ。

香港の自由が死滅しかけている今、国際社会が中国の独裁に待ったをかけなければ、中国の触手は、台湾、そして、尖閣諸島を含む沖縄へと伸びていくことは火を見るより明らか。

自民党政権をはじめ、日本の政財界が長年継承してきた「親中国的な遺伝子」を取り除くタイミングは、2020年をおいてない。

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2020年5月31日付本欄 香港衆志(デモシスト)副主席インタビュー 最前線で「国家安全法」と戦う香港の若者は今

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2020年5月29日付本欄 「中国で拷問された」在香港英国総領事館の元職員が語る「香港国家安全法」の危険性

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2019年6月13日付本欄 香港の"民主の女神" 周庭さん「逃亡犯条例」の危険性訴え「香港の自由を守りたい」

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