写真:PaulWong / Shutterstock.com

《本記事のポイント》

  • 香港で不審死が相次ぎ、警察の関与を疑う声が上がっている
  • 警察による逮捕者への性的暴行も告発され、国内外で糾弾の声が広がっている
  • 恐怖の中でも戦いを止めないのは、「自己犠牲の精神」ゆえ

香港で、痛ましい不審死が続いている。

9月に香港南部の魔鬼山(デビルズ・ピーク)沿岸で発見された水死体が、15歳の女子学生だったことが判明したという。香港の広東語新聞・蘋果日報(ひんかにっぽう・Apple Daily)などが今月11日に報じた。

死亡した女子学生は生前、複数回に渡って「逃亡犯条例改正案」反対デモに参加していた。女子学生が水泳選手としての実績を持つことに加え、死体が全裸で発見されたことから入水自殺の可能性は低いとされ、現地では「抗議活動に参加したことで殺害されたのでは」という疑念が広がっている。

この他にも、同様の不審死が香港で相次いでいる。

今月8日には、黒いTシャツを着た30歳前後の女性の遺体が香港南部の沿岸で発見され、9月にも、全身黒い服を着用した男性の遺体が沿岸で発見されている。黒い服を着ていたことから、2人とも抗議デモ参加者と推測される。

男性については、水死特有の身体の膨張はなく、口や鼻から血を流した状態で発見されたというが、香港警察は事件性が低いと判断。一連の不自然な死を受け、香港市民による警察への不信感が高まっている。

香港警察からの性的暴行

相次ぐ不審死に加え、警察による性的暴行も告発されている。

今月10日、公立校の香港中文大学では学長と在校生の対話が行われた。その中で一人の女子学生が、デモ活動に参加して逮捕された際、警察官から性的虐待を受けたことを告白した。素顔をさらして涙ながらに恐怖を語る様子が、動画としてインターネット上にあがっている。

勇気ある女子学生の訴えを受け、ある男子高校生も、拘留中にレイプされたと声明を発表。香港警察の非人道的な行為に対し、国内外で糾弾の声が広がっている。

恐怖の中でも戦いを続けるデモ隊

今日デモに参加して、今晩には命がないかもしれない。デモ参加中に逮捕されれば、人間としての尊厳を踏みにじられるような暴行を受けるかもしれない。

そんな恐怖の中にありながら、香港の人々は自由のために戦い続けている。

本誌編集部が香港で取材した民主活動家の鄭宇碩(ジョセフ・チェン)氏は、香港の若者は「自己犠牲の精神」でデモに参加していると語った。身に降りかかる不利益を承知した上で、それでも、自由や民主主義といった高次なる価値のために戦っているのだという。自分のためではないからこそ、何度倒れても立ち上がれるというのか。

未来ある香港の若者を守るには、国際社会の働きかけが不可欠だ。

たとえばアメリカの上下両院の外交委員会は9月25日、一国二制度を支持する「香港人権・民主主義法案(Hong Kong Human Rights and Democracy Act)」を全会一致で可決した。現在も、議会が法案成立に向けて動いている。

日本政府は香港デモに沈黙するばかりだが、民主主義を謳う国家として、香港市民が蹂躙されている現状に対し意見を発信すべきではないか。後世の日本人が、「あの時日本は正義のために声を上げ続けた」と誇れるような私たちでありたい。

(片岡眞有子)

【関連動画】

For The Hong Kong Protesters Who Keep On Fighting #JapanWithHK│戦い続ける香港デモ隊たちに贈る【未来編集】

https://youtu.be/xpyrFYOh_eU

泣きながら取材した香港デモ~日本人へのSOS~Japanese journalist reports Hong Kong in tears (with English subtitle)【未来編集】

https://youtu.be/_uPMN8qLDpw

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2019年10月6日付本欄 香港、警察の実弾射撃で中高生が重傷 政府は一斉弾圧の恐怖あおりデモ潰しを画策

https://the-liberty.com/article/16337/

2019年10月10日付本欄 香港デモ 民主活動家・鄭宇碩氏インタビュー「高次な価値のために自己犠牲をいとわない」

https://the-liberty.com/article/16348/