2019年9月号記事

国際政治局

Interview

アーサー・ラッファー博士

「トランプ政権で繁栄するアメリカ経済」

トランプ大統領経済ブレーンであるアーサー・ラッファー氏に、
アメリカ経済好調の理由を聞いた。

(取材・編集 藤井幹久・幸福の科学国際政治局長)

経済学者

アーサー・B・ラッファー

プロフィール

(Arthur B. Laffer)1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。レーガノミクスの元となったサプライサイド経済学の父。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)などがある。

トランプ政権の経済政策顧問を務めるアーサー・ラッファー博士が、6月に、大統領自由勲章を受賞した。この表彰は、アメリカ市民として最高の栄誉とされ、トランプ大統領がメダルを授与する姿が全米で報道された。ラッファー氏は、サプライサイド経済学を代表する伝説の経済学者であり、80年代にアメリカ経済を復活させたレーガノミクスの立案者となった。

「減税をすれば、景気がよくなり、税収が上がる」ことを指摘したラッファー曲線の理論が知られている。

──ニューヨーク・ダウ平均株価は、2万7000ドル台の史上最高値を更新しています。(2019年7月現在)

株式市場は、最高の未来予測です。いまの株価は、アメリカ経済のさらなる繁栄を予測しています。税金を安くした国には、資本が移動していくのです。これが現在、アメリカで起きていることです。

──オバマ前政権の経済政策は、正反対でした。

2008年大統領選では、オバマ当選が近づくにつれて、株価は下落していきました。大増税政策により、景気の悪化が予想されたからです。オバマ勝利の見通しが、まさに株式市場の崩壊の原因になったのです。オバマは、自由市場を理解する大統領ではありませんでした。

日本政府の「悪い経済学」

大統領自由勲章の受賞後に、トランプ大統領と笑顔で握手をするラッファー氏。写真:AP/ アフロ。

──ケインズ政策の何が問題なのですか?

需要サイドの経済学では、「政府支出が景気を刺激する」と主張します。しかし、政府支出とは、課税なのです。この事実が意識されないのは問題です。

日本の政府も、これまで財政支出が景気をよくすると考えてきました。経済学者のポール・クルーグマンもそうです。しかし、財政支出は解決策ではなく、それ自体が問題なのです。

──政府支出では景気はよくならないということですか?

政府支出は、課税であると同時に、再分配です。豊かな人に課税して、貧しい人にお金をあげる。すると、貧しい人がたくさん増えて、お金持ちはいなくなります。しかし、貧しい人を底上げすべきで、豊かな人を引きずり降ろすべきではありません。

政府には富の創造はできず、富を再分配するだけです。政府支出のための課税は、経済を破壊します。だから、「景気をよくするために財政支出を」というのは、「悪い経済学」なのです。

日本で起きた大不況

──日本政府は、10月に消費増税を予定しています。

日本では、1989年4月に消費税が導入されました。当時の日経平均株価は、3万8900円台(1989年末)までありましたが、現在、株価は2万円台です。この30年のあいだに、大不況が起きたことを意味しています。

トランプ政権で大好況に

──トランプ大統領の経済政策の成果は?

トランプは、職業政治家ではなく、企業経営者でした。おかげで、アメリカの株式市場は好調です。そのどこが悪いのですか? トランプは、大統領として素晴らしい仕事をしています。私は、減税、規制緩和、自由貿易、政府支出の削減という政策が正しいと考えているからです。

しかし、まるで「世界の終わり」のように批判する人もいます。レーガン大統領の顧問をしていた頃も、同じように言われたことを、思い出します。