Expert Interview - 中国共産党と闘うミス・カナダに聞く 「無神論国家の迫害には屈しない」

Expert Interview - 中国共産党と闘うミス・カナダに聞く 「無神論国家の迫害には屈しない」

 

2019年6月号記事

 

Expert Interview

 

中国共産党と闘うミス・カナダに聞く

「無神論国家の迫害には屈しない」

 

中国共産党からさまざまな圧力を受けても、
中国政府による人権弾圧の被害者のために活動を続ける女優に、
その行動を支える信念について聞いた。

(聞き手 藤井幹久・幸福の科学国際政治局長/ニューヨーク市内)

 

 

女優・人権活動家

アナスタシア・リン

プロフィール

(Anastasia Lin) 1990年、中国・湖南省生まれ。13歳でカナダに移住し、トロント大学で舞台芸術と国際関係学を専攻。2015年に「ミス・ワールド」のカナダ代表に選ばれたが、人権問題で中国政府を批判していたため、世界大会の開催国だった中国への入国を拒否された経験を持つ。

 女優として映画や劇に出演しながら、世界各国で中国の人権弾圧の実態を訴える活動を続けるアナスタシア・リンさん。

 中国に生まれた彼女の人生が激変したのは、大学教授だった母親とカナダに移住した13歳の時だった。

「カナダで新聞やインターネットなどの情報に触れて初めて、中国の本当の姿を知りました。

 特に、学生が虐殺された天安門事件や法輪功の学習者、チベット人、ウイグル人への人権弾圧などの実態は、それまで中国で教わっていたこととまったく違いました。中国政府に『だまされていた』ことに気づき、とてもショックでした」

 自身も法輪功の学習者であるリンさんは、他の学習者やチベット人、ウイグル人とともに、中国の人権弾圧に反対するパレードに参加した。彼女はこの経験を「西洋社会の民主主義の考え方に触れた初めての経験だった」と振り返る。

 

 

「声なき人々」との出会い

「ミス・ワールド」のカナダ代表に選ばれたアナスタシア・リンさん。

 名門トロント大学で舞台芸術と国際関係学を学んでいたリンさんは、ある映画監督と知り合った。

 「その監督は、中国の人権問題を扱う映画をつくるにあたって、中国人の女優を探していました。しかし中国政府の報復を恐れて、誰も出たがらなかったといいます。

 私は出演を決め、撮影を通して数多くの人権弾圧の被害者の声を聞く機会をいただきました。彼らの話はもっと多くの人に聞かれるべきだと感じ、そのために自分も何かできることをしたいと強く思うようになりました」

 その後も、中国の人権問題を描く映画やテレビ作品のなかで、被害者を演じ続け、人権状況や腐敗の改善を訴えた。

 こうした活動の実績も評価され、リンさんは2015年、世界三大ミスコンテストの一つである「ミス・ワールド」のカナダ代表に選ばれた。

 

 

「私は沈黙しない」

 その存在が世界的に知られるようになったきっかけは、ミス・ワールド世界大会の開催地となった、母国・中国への入国を、中国政府に拒否された事件だ。

 各国のメディアは連日、リンさんの入国を許可されなかった理由として、彼女が中国での迫害を題材にした映画に主演し、中国政府を批判し続け、当局に「ペルソナ・ノン・グラータ(望まれざる人物)」とされたからだと大々的に報じた。

 中国政府は注目を集めるリンさんの言論を封じるため、あらゆる手段で圧力をかけた。

 中国在住の父親の自宅に公安警察を送り込み、「これ以上、人権問題に触れないよう伝えろ」と脅した。それでもリンさんは沈黙しなかった。

「私は、中国にいる家族が受けた嫌がらせを多くの人に知ってもらうことで、かえって家族を守れると考え、メディアの取材を受け続けました。

 中国国内で人権弾圧に遭っている人々は、声を上げることも自身の話を聞いてもらうこともできません。私はそうした『声なき人々』の声になりたい。だからどんな圧力を受けても沈黙することはありません」

 

 

北米で「文化大革命」が進行中

中国の人権問題を訴えるリンさんは、国際メディアの取材を受けたり(上)、米議会公聴会でも証言するなど(下)、積極的な発信を行っている。写真:ロイター/アフロ、AP/アフロ。

 結局、ミス・ワールド世界大会には参加できず棄権となったが、大会事務局は翌16年、リンさんが米ワシントンD.C.で開催される世界大会にカナダ代表としての参加を認めると発表した。

 しかし、事務局は大会では「人権問題に触れない」という制限を課したと報じられた。

 リンさんへの取材には大会側の許可が必要で、実際に取材した記者たちは「取材後、大会関係者から発言内容の説明を求められた」「取材を中断し、解散するよう強要してきた」と規制や妨害があった事実を明かした。

 同年にワシントンD.C.で開催された主演映画『ブリーディング・エッジ(邦訳:最前線)』の試写会も、何者かに妨害され、本人は出席できなかった。

 この映画は、中国が国家ぐるみで行う囚人の臓器収奪を取り上げた作品。リンさんは、収監された法輪功学習者を演じ、カナダ・バンクーバーの映画賞「レオ・アワード2016」で主演女優賞を受賞した。

 リンさんは「中国当局の政治的な圧力がいたるところにかけられている」と警鐘を鳴らす。

「米メディアはもちろん、ハリウッドでも、中国政府の意向で脚本を書き直されることは日常茶飯事になっています。北米で、かつて中国で起きた『文化大革命』を思わせる状況が現在進行形で広がりつつあることをとても心配しています」

 リンさんは「ミス・カナダ」の肩書きを生かし、人権活動家としての行動を活発化させている。女優やモデルとして活躍しながら、各国の議会や大学などで講演活動などを続ける。「その勇気はどこからくるのか」という質問に彼女はこう答えた。

 「誰かが声を上げなければ、中国の人権状況は悪くなる一方です。その実情を知っていて、自分にできることがあると分かっていて、何もせずにいることは、自分の良心が許しません。だから人権活動家になりたくてなったというより、他の選択肢はありませんでした」

 

 

初めて中国人を誇りに思えた

 かつて中国本土にも、リンさんのように中国共産党に立ち向かった若者たちが存在した。今年は天安門事件から30年の節目。カナダ移住後にこの事件を知ったというリンさんは、自国政府による市民虐殺をどう思っているのか。

「中国人は天安門事件についてまったく沈黙しています。特に私のような若い世代には、事件の存在すら知らない人も多いと思います。

 当時、天安門に集まった若者たちの心には、『内部から中国を変えられる』という希望がまだあったのだと思います。

 しかし学生たちが虐殺されたあの日、その心はへし折られ、希望は打ち砕かれました。

 その後、中国人はますます唯物的になりました。精神性や哲学、道徳、他人への愛の思いが失われています。とても悲しいことです。

 私も天安門で声を上げた若者たちの姿を動画で観たことがあります。彼らの精神を見て、人生で初めて、同じ中国人を誇りに思えました。あのような精神性の高みをもう一度、中国国内で見られることを願っています」

 

 

中国人も信仰を求めている

リンさんが4月7日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿したオピニオン記事「北米で起きている文化大革命」。

 リンさんは、中国の体制を変えるには内部からの改革が必要不可欠だと語る。

「私の望みは、無神論の中国共産党を中国から追い出すことです。共産党は中国の代表者ではありません。中国には本来、長い歴史をかけて培ってきた文化があり、信仰があります。中国共産党よりもずっと深いルーツがあるのです。無神論国家の迫害に屈するわけにはいきません」

 リンさんは、法輪功が一時、1億人近くもの学習者を集めた理由の一つに、中国人の伝統的な信仰があると考える。

「実は、法輪功の本質的な教えは、古くから中国に伝わる道教、儒教、仏教に通じるものです。こうした信仰が共産党によって破壊されてしまいました。だから現代の中国人の心には、『精神的な空白』があるんです。その空白を埋めるものが法輪功の教えであり、修練だったのだと思います」

 

 

「中国の人権状況に関心を」

 最後に、日本人に伝えたいことを聞いた。

「今年の春、日本を訪れたばかりです。とても美しい国だと感じました。日本のような民主主義の国に生きる人々は、中国のような独裁政権下で生きることがどういうものか想像もつかないかもしれません。

 しかも日本では、長い歴史をかけて培った伝統的な文化が今も守られています。一方、中国の伝統的な文化は、共産党によって破壊されています。

 だからこそ日本の皆さんに伝えたいのは、今ある自由と伝統的な文化をこれからも大切に守ってほしいということです。それらは宝石よりも価値があり、当たり前のものではありません。

 日本人と中国人は、国籍は違っても同じ人間です。人間性は普遍的なものだと信じています。だから、隣国で行われている恐ろしい人権弾圧の実態についてぜひ関心を持ってください。そして現状が改善するよう、共に願い、共に戦っていただけたら幸いです」

 

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