レーダー照射されたとされる海上自衛隊のP1哨戒機(出典: 海上自衛隊ホームページ )

《本記事のポイント》

  • 支持率落ちる文政権が日本を餌食にした!?
  • 「照射データ公表」カードを封印すべきでない
  • 今後の「正当防衛行動」を世界に公表すべき

河田 成治

プロフィール

(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した。

この問題に関して、韓国側と自衛隊側の言い分が食い違っている。韓国国防部は「一切の電波放射はなかった」と主張。一方、防衛省は「火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射された」と反論している。

とはいえ、自衛隊が虚偽の報告をすることは、基本的には考えられないだろう。日本はどのような対応をするべきなのか。

元航空自衛官であり、現在はハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教える河田成治氏に話を聞いた。

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支持率落ちる文政権が日本を餌食にした!?

今回のレーダー照射問題については、経済政策の失敗などで支持率が落ちている文在寅政権が、国内の求心力を高めるため、「反撃してこないだろう」として日本を格好の"餌食"にした可能性も考えるべきです。

もしこのまま真実がうやむやになってしまえば、韓国では「日本が言いがかりをつけてきた」「被害者は韓国だ」というような風評が蔓延し、ナショナリズムが高揚するでしょう。

それは文政権の、従軍慰安婦問題や徴用工問題などで日本を悪者にすることで、支持率を上げようとしてきた思惑に一致します。また、韓国の国会議員がパフォーマンスのために竹島上陸するといった行為とも、文脈上は同じといえるかもしれません。

しかし、このような日韓の対立は、百害あって一利なしです。日韓分断につながる動きは、アジアにおける覇権を狙う中国の利益になるからです。

したがって、他のアジア諸国のためにも、あるいは韓国国民のためにも、日本は理性的に事実を白日の下にさらし、抗議以上の具体的な活動と、事実究明を促す圧力をかける必要があるでしょう。

「照射データ公表」カードを封印すべきでない

日本はまず、レーダー照射されたデータの公表をちらつかせるべきでしょう。防衛秘密に属する部分もあるので扱いは慎重にすべきですが、交渉のカードに使うことまで封印すべきではありません。

また、今回のパトロール飛行のコースや飛行高度についても、韓国側は、韓国駆逐艦の上空を低空飛行する特異な行動を取ったと主張しましたが、日本側が記録したであろうレーダーによる航跡を公表し、自衛隊機に落ち度がないことも証明すべきです。

データ公表について、岩屋防衛相は記者会見で、「わが方の能力に関わることは、中々、公表というわけにはまいりませんが」と述べています。確かに防衛秘密にあたる内容を含むかもしれませんが、もし過度な韓国側への遠慮から公表を控えているのなら、考え直すべきです。

今後の「正当防衛行動」を世界に公表すべき

その上で、釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置された時のように在韓大使を帰国させて、韓国側の真摯な事実関係の報告を待つ。最終的には、大統領、国防大臣、韓国海軍に謝罪をさせる必要があるでしょう。

さらに自衛隊は、武器使用基準(交戦規定・ROE)で、今後、同じようなレーダー照射を受けた場合に、正当防衛行動を行う旨を、国連および世界に公表するべきです。国際的な支持は得られるでしょうし、今後の韓国側の軽率な行動も抑止できるでしょう。

ちなみに2013年に尖閣諸島の北方海域で、中国海軍艦艇が日本の海上自衛隊護衛艦へ今回の事例と類似したレーダー照射を行う事件がありましたが、それは中国共産党中央委員会の指示によるものだったことが判明しています。その時に日本側は、特段の措置を取りませんでした。そのことが今回の韓国の行動の敷居を下げた可能性はあります。

「うやむや」は逆に禍根を残す

外務省の対応にも注目が集まります。かつて外務省は日韓合意でも、いわゆる従軍慰安婦問題を、日韓合意として10億円で手打ちにしようとしました。結局、蒸し返されて、残ったのは「日本が『従軍慰安婦を認めた』という禍根」でした。うやむやにすると、逆に禍根を残すのです。

日本は韓国のように感情をあらわにして罵るような外交を同じ土俵ですべきでなく、紳士的で穏やかな対応であるべきと考えます。しかしその根底には、「正しいことは曲げない」というサムライ精神と、正義を守る気概を持つべきです。そして理性的に謝罪と再発防止策の説明を要求するべきです。

日本は先進国の責務として、国際ルールと国家間の信義をわきまえないような国家には、それを分からせる教育的指導が必要だと考えます。(以上)

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