《本記事のポイント》

  • IMFの10月の報告書で日本は消費増税が不必要であることが判明。
  • 保守の精神は、家族、教会、政府等の共同体の価値を重視。そのために国防は不可欠。
  • 減税と規制緩和で経済成長率3%超を達成しつつあるアメリカ。

東京都内で17日~18日、JCPAC実行委員会による日米やアジア太平洋地域の保守思想の連帯を目指す国際会議「J-CPAC2018」が開催された。数々のセッションが行われるなか、「トランプイズム」のセッションでは、「減税と規制緩和」を中心に議論が交わされた。

消費増税の論拠を崩すIMFの報告

産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員の田村秀男氏

セッションの冒頭では産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員の田村秀男氏が、IMFによる新たなデータをもとに、消費増税が必要ではないとして、こう述べた。

「日本は来年の秋に消費増税を控えています。その理由として政府債務が挙げられています。しかしIMFが先月10月に発表したデータによると、日本は政府の資産と負債がバランスして(純)負債はゼロに等しいと認められています。ドイツ、アメリカ、イギリスと比べても、日本のバランスシートが健全であることを証明したわけであります。この新たなIMFの調査は、『緊縮財政と消費増税しかない』という議論による金縛りから私たちを抜け出させてくれるものではないか」

いまこそ必要な「ジャパン・ファースト」

そして日本も「ジャパン・ファースト」が必要であるとして、「成長戦略を進めていくべき」だと述べた。例えば脱デフレに向けた財政支出戦略、消費減税、インフラ投資、基礎研究への投資、防衛費のGDP比1%上限の撤廃、技術革新、研究開発を推し進めるための規制緩和等の重要性を訴えた。

ミック・マルバニー氏が語るアメリカの保守の精神

次に、米行政予算管理局長のミック・マルバニー氏が登壇。マルバニー氏は元サウス・カロライナ州選出の下院議員でトランプ政権への移行期間より経済政策を担当。トランプ氏の経済を「Make America Great Again」の頭文字を取って、MAGAnomicsと称し「アメリカをもう一度偉大にする」政策を日々に実行する役割を担っている。

講演の冒頭でマルバニー氏は保守について、以下のように語った。

「保守といってもひとくくりにできるものではありません。家族を重視する保守にとっては中絶の問題が最も重要かもしれません。財政の問題を考える保守は政府支出の問題に取り組んでいます。ただどの国であっても保守であるからには、私たちを結びつけるテーマがいくつかあります。それは個人の主権、つまり自己責任の問題です。言い換えれば『政府があなた方の面倒を見るわけではない』ということです。

また人治による支配ではなく法の支配の重要性についても認識を共有しています。世界には脅威が存在しますので、国防の重要性も理解しています。保守の人々は『なぜ私たちは共同体で自分たちを守らなければならないのか』を理解しているのです。

そして保守にとっての共通の敵がいます。それは社会主義であり、エリート主義であり、大きな政府です。

また保守とは制度や機関の価値をよく理解している人たちです。家族、教会、政府、裁判所、強い軍隊の大切さをよく理解しています。フランス革命は、1789年にこういった制度や機関をすべて破壊しました。そして過去とのつながりを断ちました。しかし、私たち個人は、コミュニティやよく整えられた制度や機関のなかで、私たち自分自身をよく表現できると考えております」

政府より国民の方がお金をよりよく使える

さらにマルバニー氏は、財政上の保守のあり方についても触れ、その本質について「政府がお金を使うより、みなさんのほうがよりよく使うことができるということ」と述べた。また、自身が局長を務める行政予算管理局の仕事についてこう語った。

「行政予算局においてトランプ氏が要請していることは2つあります。一つは税制改革であり、もう一つは規制緩和です。なぜ減税を行ったのか。その理由は、私たちは国民がもっと稼いだお金を自分の手元に残すべきだと考えたからです。市場の価値を信じています。私たちがベストだと考えるところにお金を使うのがよいのです。それが資本を割り振るのにふさわしいやり方です」

規制撤廃の仕方すら忘れた政府

「私は過去メキシカン・フード・レストランを経営していましたが、メニューにカロリーを明記しなければなりませんでした。もし政府の規制にすべて従っていたら、メニューボードは、サッカー・ピッチほどの大きさになってしまいます。レストランが、巨大なメニューボードをつくるためにお金を使うのは賢いやり方ではありません。

しかしこの20年、30年と規制を撤廃してこなかったので、政府は規制を撤廃する方法を忘れてしまいました。政府に規制を緩和する方法を教えなくてはならないのです。規制を撤廃するのに最低でも6カ月かかってしまいました。トランプ政権の発足から18カ月が経ち、皆さんが予測していたよりも早くアメリカ経済は回復し、現在3%超の経済成長を達成しています」

ディスカッションにおいて、財源の問題について質問されると、「減税をすれば短期的には財源は減りますが、8年から10年で税収は大きく増える」と述べた。

フラット・タックスを目指そう

日本税制改革協議会の内山優会長。

さらに日本税制改革協議会の内山優会長が登壇。全米税制改革協議会(ATR)のグローバー・ノーキスト議長と同様、増税をしないよう議員に働きかけて、納税者保護誓約書に署名してもらう活動を紹介した。

さらに内山氏は、国民負担率を1年の日数で換算すると、日本人が政府に税金を納めるためではなく、自分のために仕事をする日は6月5日からとなっており、赤字国債の発行も含めれば6月27日になると述べ、「自分の稼いだお金の半分を政府に納めたいですか」と会場に問いかけた。さらに所得税に対する一律17%の課税をするフラット・タックスについても紹介すると、会場から拍手が起きた。

最後に司会の田村氏は、3%成長を達成しているアメリカ経済にならって、日本も減税し、経済のダイナミズムを取り戻していきたいと締めくくった。

日本の7月~9月の国内総生産は、年率換算で1.2%のマイナス成長となった。一方、アメリカは自然災害が起きても3%以上の経済成長を維持し、経済は堅調である。中国の経済が減速すれば、内需が弱く輸出頼みの日本経済は、世界経済の「負け組」に入ることになる。そのような経済情勢では、中国の脅威に立ち向かうことは不可能だ。

経済成長は決して偶然で起きるものではない。国民を繁栄させるという強い意志が必要である。また、それは国防強化に必要不可欠の前提である。日本の大戦略について必要な示唆を与える集いとなった。

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