「孫子」で中国に「戦わずして勝つ」 ―日本の新しい平和主義 - 編集長コラム

「孫子」で中国に「戦わずして勝つ」 ―日本の新しい平和主義 - 編集長コラム

写真:AP/アフロ

 

2018年4月号記事

 

編集長コラム Monthly  Column

 

「孫子」で中国に「戦わずして勝つ」

――日本の新しい平和主義

 

 

「覇権国と覇権を目指す国の間では、過去500年で16個のケースのうち4つしか戦争を防げませんでした。戦争になればアメリカ、中国、日本にとっても破滅的なことです」

 著書『米中戦争前夜』の発刊に合わせ、2月に来日した国際政治学者のハーバード大教授グレアム・アリソン氏は東京都内での講演でこう語った。

 アリソン氏の主張は、端的に言えば「アジアの覇権は中国に譲ればいい」というもので、米政界でも一定の支持がある。

 北朝鮮の核・ミサイル危機についても「米中戦争に発展しかねない」と、トランプ米大統領の強硬姿勢に異論を唱えた。

 

 

米中による覇権の攻防

 今の時代は、米中が世界の覇権をめぐって攻防を展開していると言っていい。

 イギリスの歴史学者トインビー風に言えば、今まさに「文明の挑戦と応戦」が起こっている。トインビーは「歴史は神の創造活動」と語っていたので、今の時代ほど神の心を読み取らなければならない時はない。

 先のアリソン氏が理解していないのは、中国が人間を虫けら同等に扱う国ということだ。中国の習近平・党総書記は、国内のキリスト教徒やイスラム教徒への弾圧を強め、宗教を禁じる北朝鮮のレベルに近づいている。

 アメリカは信教の自由を守るために生まれた国として、中国と北朝鮮の軍事拡張主義を抑え込もうとしてはいる。ただ、半島情勢でトランプ氏が決断できなければ、「アジアの覇権を中国に譲る」ことになる。

 憲法改正の議論を含め、今年は、アメリカに国防を依存する戦後日本の「平和主義」が揺らぐ年となるだろう。

 

 

軍事戦略のない日本

 日本の平和主義は、「日本が軍事に関わることは悪であり、自衛隊は憲法9条で縛りつけないといけない。そうしていれば平和がやって来る」というものだ。

 ただ、これほど世界の常識からかけ離れているものはない。

 19世紀に『戦争論』を書いたクラウゼヴィッツが唱えたように、どこの国も「戦争は他の手段をもってする政治の継続」という考え方で動いている。

 アメリカの場合、ウィルソン大統領以来の「自由と民主主義を世界に広げる」という"国是"を持つ。そして、アメリカ中心の国際秩序を脅かす国を抑え込むための軍事戦略を組み、裏づけとなる軍事力を保有する。

 日本の場合、国家戦略らしきものはない。安倍政権が2013年に初めて「国家安全保障戦略」を策定したが、「米軍を守る自衛隊」「ソ連からの侵攻に備える冷戦時代の自衛隊」を引きずり、一独立国としての軍事戦略があるわけではない。

 

 

何が覇権の攻防を左右?

〈上〉古代ギリシャとペルシア帝国との戦争、〈下〉火砲が登場した百年戦争

 日本が軍事戦略を立てるにあたって、歴史的に何が覇権をめぐる攻防を左右してきたのかを理解しておきたい。

 紀元前5世紀の古代ギリシャでは、都市国家の市民が「民主政治を守る」という愛国心からペルシア帝国と戦った。

 その後栄えたローマ帝国も当初は市民が兵役を担ったが、次第に傭兵に取って代わり、国が弱体化した。ギリシャ、ローマの時代とも、重装歩兵が主役だった。

 ローマ帝国が分裂し、封建国家がたくさんできた中世(5世紀以降)は、戦場指揮官が君主と主従関係を結び、十字軍などに参加した。日本で武士が登場したのも同時期だ。馬に乗る騎士や武士が武勇を誇る、古き良き時代だった。

 火薬が発明され、鉄砲や大砲が主力になった16世紀は、騎兵が主役の時代が終わり、歩兵(日本では足軽)が銃剣を持って復活した。これらの武器を用意するには一定規模の財力が必要で、それができる絶対君主国家が台頭した。

 この流れから19世紀初め、フランスにナポレオンが登場して、国民国家のナショナリズムの下に徴兵制を強化し、巨大な近代的軍事組織を編成。周辺の君主国を次々と打ち破った。

 武器の発達も重要だが、国の指導者や指揮官がどういう軍事組織をつくり、どう運用するかが、戦争の勝敗を決めたと言っていいだろう。

 

軍事力は、古代の重装歩兵から、中世の騎兵、近世の銃兵・砲兵、近現代の巨大な軍事組織と機械化軍へと発展してきた。絵画は、近代的軍隊の先駆けをつくったナポレオンを描いたもの。

 

 

今も通用する「孫子の兵法」

 それでも19世紀の産業革命後は、軍事技術の優劣が大きく寄与するようになってはいる。

 第一次大戦(1914年~)は、戦車や航空機などで軍の機械化が進み、工業生産力を背景にした「国家総力戦」になった。

 第二次大戦(1939年~)はそれが加速。本格的な航空戦の時代に突入し、制空権・制海権を押さえた国が勝利するようになった。

 戦後の米ソ冷戦は核兵器の抑止力が働き、直接の戦争にはならなかった。レーガン大統領が「ソ連は悪の帝国」と名指ししたうえ、「経済戦争」を仕掛けてアメリカが勝利した。

 現代の戦争は、直接戦火を交える以前に、経済を強くし、相手の戦意をなえさせる抑止力をつくり上げる「平時の戦い」が中心になっている。

 今、米中が戦えば、ネットを通じて攻撃し合うサイバー戦争や、人工衛星を潰し合う宇宙戦争で決着するとも言われている。

 結局、政治指導者が国家の人材と資源を組み合わせ、「孫子の兵法」が説くような「戦わずして勝つ」体制をつくることが、覇権の攻防の行く末を決めると言っていいだろう。  宇宙戦争の時代になっても、「孫子」は十分通用する。

 

 

「戦わずして勝つ」には

「孫子」は中国のお家芸だが、逆手に取って日本の軍事戦略を組み立てると、どうなるか(*)。

(1)まず、冷戦期のレーガンのような「大義名分」が欠かせない。今の時代なら、「宗教を認めず、人間を虫けら扱いする国の影響が世界に広がることは許さない」という正義を掲げるべきだろう。

(2)「孫子」が「彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず」と言うように、「情報戦」において中国、北朝鮮が何を狙い、行動するかをつかんでおかなければならない。特に中国は短期決戦で一気に台湾や日本の南西諸島を制圧する準備をしているので、それに対する備えが必要だ。

(3)「戦わずして勝つ」ためには、中国に「日本や台湾に手を出しても跳ね返されるから無駄だ」と思わせないといけない。それには日米同盟が不可欠だし、中国の背後のインド、ロシアとの事実上の同盟が決定打になる。

 そのうえでトランプ大統領が今後強めるであろう対中経済包囲網に加勢する。さらには中国国内で民主化運動が活発化する工作を仕掛け、ソ連崩壊の再現を目指したい。

(*)大川隆法著『ダイナマイト思考』第4章「私の兵法」、同『常勝の法』第2章「勝負に勝つ法」ほか参照。

 

 

「勝つべくして勝つ」には

(4)「勝つべくして勝つ」という強者の兵法は、日米同盟が機能することで可能になる。有事に日米で中国軍を東シナ海に封じ込めるため、南西諸島に近づく中国の艦艇を一つひとつ沈める態勢が要る。また、中国からの無数のミサイル攻撃を抑えるための反撃能力も必須となる。

(5)米政権のスタンスによっては米軍が十分動けない可能性もあるので、日本単独での「負けない戦い」を考えておかなければならない。軍事力だけで見れば、対中国で日本は弱者の兵法をとらざるを得ない。

 その場合、決定的に日本に欠けているのは、中国の核兵器を抑止することだ。そのための日本の核装備は、対中国の有事であっという間に日本が降伏することを避ける不可欠な手段となる。

(4)と(5)のための自衛隊の再編は、一独立国として自立した軍隊を持つことを意味する。憲法9条を改正し、交戦権を認めることはその第一歩となる。

 

 

日本としての「文明の応戦」

「軍事力は悪であり、自衛隊を縛りつけておけば、平和がやって来る」という戦後日本の平和主義は、もう終わりにしたい。

 覇権をめぐる攻防が展開されるなかで、日本の軍事戦略によって中国と北朝鮮の野望をくじき、アジアの平和を守ることが、新しい平和主義となるべきだ。

 それで初めて日本は、「文明としての応戦」を果たし、「神の創造する歴史」の担い手となることができる。

(綾織次郎)

 

写真:AP/アフロ

 

中国に「戦わずして勝つ」方法

  • 1 アジアで宗教的自由を実現する「大義名分」

  • 2 中国、北朝鮮の狙いをつかむ「情報戦」

  • 3 同盟強化や経済包囲網で「戦わずして勝つ」

  • 4 中国を軍事的に封じ込め「勝つべくして勝つ」

  • 5 日本の核装備などによる「負けない戦い」

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