天安門広場に通じる路上で、戦車の行く手を遮る無名の男性。

2016年7月号記事

香港ルポ

天安門事件から27年

中国の民主化に挑む人々

27年前、中国・北京の天安門広場で、民主化を求める学生たちが、人民解放軍の銃弾に倒れた。中国で唯一、追悼式が行われる香港の今をレポートする。

(編集部 長華子)

今年4月、香港で行われた天安門事件の献花式。中央の献花の、すぐ左を歩くのがホー氏。右で花を持つのがチョウ氏。

事件の数日前、天安門広場で民主化を求める学生たち。写真:HIRES CHIP/GAMMA/アフロ

天安門広場になだれこもうとする学生と、阻止しようとする警察官。写真:ロイター/アフロ

毎年6月4日、香港のビクトリア公園では、大規模な追悼式典が行われる(写真は2009年)。写真:ロイター/アフロ

ビクトリア公園で、犠牲者を追悼する女性たち(同)。写真:AP/アフロ

1989年6月4日、中国・北京の天安門広場で、50万人の学生や市民が民主化を求めた運動に対し、 中国政府は軍隊を送り、自国民を銃で撃ち、戦車で踏み潰した。 中国政府は、事件の犠牲者を319人と発表しているが、実際には、数千とも数万とも言われている。

政府が事件の実態を隠し続けている中国本土では、天安門事件について、新聞やテレビはもちろん、ネットですら知ることができない。

自由が失われている

「天安門で亡くなった方々は、中国の人々の良心の象徴だ」

香港の民主派を代表する民主党の議員を務めるアルバート・ホー(何俊仁)氏は、そう語った。

中国のお盆にあたる清明節の4月4日、九龍島の香港文化中心近くの広場で、27年前の天安門事件で亡くなった人々を追悼する式典が執り行われた。参列した人々は、次々と献花し、哀悼の意を表した。

献花式を主催するのは、香港に「天安門事件記念館(6・4記念館)」を設立した、「香港市民愛国民主運動支援連合会(アライアンス)」。しかし、 6・4記念館は、ビルの所有者の反対に遭い、年内に閉館する見通しだ。

献花式の取材に訪れていた、香港人の女性ジャーナリストはこうつぶやいた。

「天安門事件は、私がジャーナリストを志した大きなきっかけ。母は、毛沢東時代に中国から香港に逃げてきました。毛沢東を彷彿とさせるような習近平政権によって、今、あらゆる面で香港の自由が失われています」

香港は、中国で唯一、犠牲者の追悼が行われる場所だ。この香港から、中国に民主主義の価値観を広めようと活動を続けるアライアンスのアルバート・ホー主席とハン・タン・チョウ副主席に話を聞いた(次ページ)。

次ページからのポイント

インタビュー: アルバート・ホー氏 / ハン・タン・チョウ氏

6・4記念館の閉鎖は政治的な圧力 / 民主化した未来を心に描いて行動する

香港と中国って、どんな関係なの? そもそも解説 (マンガ)