海洋研究開発機構がこのほど、小笠原諸島・南鳥島の沖合、5500メートルの海底で、コバルトなどを含んだ岩石が広い範囲に存在していると確認し、岩石の採取にも成功したと発表した。

小笠原諸島から沖縄県にかけての日本の近海には、白金やニッケル、コバルトなどのレアメタルと呼ばれる希少な金属を含んだ岩石、「コバルト・リッチ・クラスト」が広がっていると、2009年より相次いで確認されていた。これらのレアメタルは、最先端の工業製品の製造に欠かせない金属だ。

これまでは、深さ3500メートルの海底までの分布が確認されていたが、今回の調査では、5500メートルの海底にも、コバルト・リッチ・クラストが存在していることが分かった。またこれまでの研究から、深い場所から採取される岩石ほど、含まれるレアメタルの密度が高くなることが分かっている。これにより、日本近海で推定される資源量が大幅に増える見込みだという。

レアメタル確保の現状は不安定

レアメタルのコバルトやニッケルは、ハイブリッド車やスマートフォンのバッテリーなど、高付加価値・高機能製品の製造に必須の素材だ。

現在日本は、このレアメタルの供給を、100%輸入に頼っている。ただ、この輸入は不安定な情勢下で行われていることが、長年の問題だ。

コバルト埋蔵量世界第1位のアフリカのコンゴ民主共和国は、現地の不安定な政情から供給が滞ることが多かったため、日本は他の取引国を開拓してきた。また日本のニッケル輸入率1位のインドネシアも、2014年、国内の加工産業育成のためにニッケル禁輸を行ったことがある。

今回の発見は、資源の確保に奔走してきた資源小国の日本にとって、とても喜ばしい報告だ。近海の豊富な資源が開発可能になることは、日本の経済的発展や国防にとって重要な意味を持つ。

尖閣諸島をきっかけとした日中摩擦から、2010年、中国がレアアースの対日輸出規制を行ったこともあった。国内メーカーへの打撃が懸念されたが、日本は中国以外の輸入国を開拓したり、レアアースのリサイクル技術を開発したりして対抗し、中国からの兵糧攻めに勝利した。だが、自国で採掘できればこういった危機の可能性も減らすことができる。

海に囲まれた日本の持つ高い潜在能力

四方を海に囲まれた日本は、国土面積は世界第61位だが、領海と排他的経済水域を合わせた面積では世界第6位になる。これは国土の12倍の広さだ。この海を有効に活用しない手はない。

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が発効すると、海洋国家として、太平洋を中心に発展していく未来が待っている。日本は、海底の掘削や探査などの技術開発を進めることで、国際社会をリードすることもできるだろう。海洋資源確保による、製造業のさらなる活性化と、資源調査や海底開発の産業化によって、日本は新たな経済成長を実現できる。

(HS政経塾 表奈就子)

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